海外情報誌_ARDEC

モザンビーク 撮影:長倉洋海 / JICA
(モザンビーク 撮影:長倉洋海 / JICA)


海外情報誌 “ARDEC”について
 本誌は農業農村開発に関する世界の新しい情報を読者に提供し、海外協力への理解を深めていただくために、平成6年度から1年に3回、平成17年度から2回発行しているものです。
 ARDEC(アルデック)とは、本誌の発行所である一般財団法人日本水土総合研究所(The Japanese Institute of Irrigation and Drainage : JIID)海外農業農村開発技術センター(Overseas Agricultural and Rural Development Center)の略称ですが、農業土木技術者全体の情報誌として位置づけていることから、農林水産省、国際協力機構、国際農林水産業研究センター、農業農村工学会、海外農業開発コンサルタンツ協会のご協力により編集を進めております。

インド 撮影:久野真一/JICA
インド
撮影:久野真一 / JICA

       京都大学 人文科学研究所
                准教授 藤原辰史

 心安らかに、思い残すことなく綺麗に死ぬこと、潔く死ぬことを美化する言説に私はいつも違和感をぬぐい切れない。この世にたっぷりの未練を残し、歯をくいしばって、もう体内には残っていないはずの水分を目尻から落としながら苦悶の表情を浮かべたまま死ぬことも人の死である。「地球の飢餓人口は10億人」という数値から、飢えて死ぬ最後の時間、涙を流し続ける数億の少年や少女の顔を思い浮かべる人は少ないだろう。最後の関係性が断ち切られたとき、この少年に残された道はもはや死だけだった。哀しいのはそればかりではない。自分の食べるものがない小板橋少年やその母親の心に、この少年の死は罪悪感を植えつける。餓死とは、個人の生命現象の終焉であるとともに、その死者をめぐる関係性の残酷な現われでもある。
 もしも、この虚ろな表情の少年の前にムラサキシキブの食堂があったとしたら、少年はいつものようにおそらく手のひらを伸ばすことだろう。そして、細腕のおかみさんは、毛布と食べものを持ってきてくれるだろう。しかし、そればかりではない。少年を生かし活かしていくための、さまざまなアイディアがこの食堂に集中するだろう。

ウガンダ 撮影:船尾 修/JICA
ウガンダ 
撮影:船尾 修/JICA

「食」の楽観的常識への覚醒


   ARDEC 企画委員長 上田一美
   東京大学 大学院 農学生命科学研究科
   教授 黒倉 寿
   政策研究大学院大学
   教授 大塚啓二郎
   独立行政法人 国際協力機構(JICA)
   農村開発部次長兼農業・農村開発第二グループ長
   田和正裕
   独立行政法人 国際農林水産業研究センター(JIRCAS)
   生物資源利用領域 プロジェクトリーダー 小杉昭彦
   京都ノートルダム女子大学
   副学長 片山 裕
   ホリカフーズ株式会社
   取締役兼執行役員 別府 茂
海外および国内の農業・農村に関連する、新しい視点や情報をお届けします。
フィリピン 撮影:谷本美加/JICA
フィリピン 
撮影:谷本美加/JICA
INFORMATION
   農林水産省農村振興局整備部設計課
   海外土地改良技術室海外調整第2係長
   宇野健一
   一般財団法人 日本水土総合研究所
   主任研究員 林 亨
BOOK INFORMATION
『アジアの「農」 日本の「農」 』
─── グローバル資本主義と比較農業論 ───
   原 洋之介著
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