2023.3 MARCH 67号
特集│切迫する食料安全保障
Contents
│特集│切迫する食料安全保障
新型コロナウイルスの感染拡大やウクライナ紛争、気候変動が食料価格の高騰と飢餓の深刻化を招き、各国の食料安全保障を脅かしている。我が国では農林水産省が環境に配慮した持続可能な農林水産業を目指す「みどりの食料システム戦略」の施策の具体化を進めている。環境にやさしく、リスクに強い食料安全保障について専門家の視点から読み解いていく。
海外情報誌企画委員会 委員長 角田 豊
株式会社農林中金総合研究所 理事研究員 平澤明彦
特集テーマに関連する各専門分野の有識者、先駆者などによる幅広い知見、最先端の取組などを紹介します。
Keynote 1
OECD農業委員会での議論、特に気候変動と食料安全保障について
農林水産省大臣官房審議官(兼輸出国際局) 牛草哲朗
(OECD農業委員会議長)
Keynote 2
みどりの食料システム戦略の推進について
~持続的な食料システムの構築に向けた政策の展開~
農林水産省大臣官房審議官(技術・環境) 岩間 浩
Keynote 3
アフリカにおける栄養・食料安全保障
国際農林水産業研究センター 情報広報室 主任研究員 白鳥佐紀子
世界の農業農村開発や特集テーマに関係する団体・個人による実践的な取組や、現地・現場の動向、今後の予定などを紹介します。
REPORT & NETWORK
土地と水を巡る紛争~イスラエル占領下のパレスチナの農業~
日本工営株式会社 農村地域事業部 地域整備部 中村友紀
日本ICID協会WG - YPFの活動を通じた若手人材育成の取り組みについて
岐阜大学応用生物科学部生産環境科学課程環境生態科学コース 准教授 乃田啓吾
北陸農政局 農村振興部長 渡邊史郎
JIIDからの報告
東南・南アジアにおける灌漑の発展過程と展望(その1)
(一財)日本水土総合研究所 顧問 齋藤晴美
BOOK GUIDE
「農業工学」
近畿大学農学部 松野 裕
INFORMATION
第8回アフリカ開発会議(TICAD8)における農林水産分野の協力(結果概要)
農林水産省 輸出・国際局 新興地域グループ
TREND 農業農村開発に関する国際スケジュール
※役職名はR5.3月現在
本誌は、一般財団法人日本水土総合研究所が定期的に発行しているものです。1994年(平成6年)からARDECとして発行してきましたが、初刊から30年近く経過したことから、第65号から「世界の農業農村開発」に名称を変更し、紙面をリニューアルしました。
本誌発行の目的は、食料確保や貧困削減、環境・生態系保全などとも密接に関係する世界の農業農村開発の現状や課題を広くお伝えすることです。このため、学識経験者、政府機関、国際機関、民間会社その他団体等の皆様から関連する自然科学・工学・人文社会学的な知識や経験について、ご寄稿いただいています。主に海外の農業や農村に関する調査研究や取組について分かりやすく紹介したいと考えています。
当研究所は、1978年(昭和53年)の設立以来、日本国内や海外において農業農村整備に関する政策や技術、知見についての調査研究や情報発信に取り組んでいます。英語名称は「The Japanese Institute of Irrigation and Drainage」です。略称は英語名称の各単語の頭文字をとってJIIDとしています。
当研究所の調査研究や情報発信においては、「産・官・学・民」のネットワークを活用し、その知見を融合することを特徴としています。「産」は民間企業、「官」は国や地方公共団体といった行政機関、「学」は大学・高校や試験研究機関、そして「民」は農業用水や農地を管理する団体である土地改良区や農業者など、幅広い関係者との連携を目指しています。
農業農村整備とは?
農業農村整備は、水田や畑といった圃場での農業生産の継続や改善を目的として、①取水堰、貯水池、ため池、用水路、排水路といった農業水利施設を建設したり、今ある水利施設を改良したりする灌漑排水の整備、②圃場の区画を大きくしたり、平らにしたり、土壌の物理化学的性質を改良したりする農地の整備、③大規模自然災害に備えて農業水利施設や農地を強化したり、災害が起こった場合に復旧したりする農村の防災減災対策などを行うものです。これは、国内外における食料の確保や飢餓の撲滅に加え、農業者の所得向上、農村の持続的発展、自然環境の保全等に貢献しています。
表紙写真
「ウクライナの港から積み出される小麦」
港の穀物貯蔵サイロから自動ラインを通じて貨物船のホールドに小麦を積み込む様子。