2023.8 AUGUST 68号
Keynote 3
株式会社天地人 岡田 和樹
木村 俊太
米陀 敬次郎
1 はじめに
進行する気候変動への対応は、地球上どの国・地域をとってみても、これからの農業・農村開発を考える上で重要な課題である。具体的には、その土地で起きている変化を正確に把握し、その影響を最小限に抑えるために必要な対策を講じていくことが求められている。そのため、従来の勘と経験による農業ではなく、データの解析に基づいた農業を目指す「農業のデジタルトランスフォーメーション(DX)」が求められている。中でも我々が注目しているのが、人工衛星から観測したデータ(以下、衛星データ)の活用である。衛星データは全球的かつ一定の頻度で観測されるデータであり、地球上のいずれの地点においても観測可能であるため、様々な分野への応用が期待されている。本稿では、気候変動に起因する農業・農村開発の課題解決に向けた衛星データの活用事例を3つ紹介する。
2 地球温暖化に伴う国内の水稲栽培の課題解決とDX(活用事例1)
(1) 国内における地球温暖化
気象庁の報告によれば、日本の平均気温は過去100年間で約1.2℃上昇している。その結果、日本の各地で気温の極端な上昇や大雨などの異常気象が頻発し、国内の農業生産においても地球温暖化による影響が顕在化している。本稿では日本の農業において重要な位置を占める水稲について取り上げ、衛星データを活用した地球温暖化に伴う水稲栽培の課題解決について述べる。
(2) 地球温暖化が稲作に及ぼす影響
地球温暖化は水稲の収量および品質に影響を及ぼす。まず、収量について、気温の上昇は、高温不稔を引き起こして収量が減少するものの、CO2濃度の上昇は、一般的に光合成速度の促進によって生育および収量が増加するため、地球温暖化の初期段階では水稲の収量が増加するという意見もある。そこで、これらの複合的な影響を調査するため、将来の大気中のCO2濃度の上昇の影響を評価するための屋外研究(農研機構を中心とした「FACE(Free-Air CO2 Enrichment)」実験)が行われた。研究では、大気中のCO2濃度を2021年現在に比べて約160ppm高い約580ppmに制御した条件下で気温を変化させた時の収量の変化を比較検討した。その結果、水稲の増収効果は、出穂後30日間の平均気温が高いほど減少し、30℃では増収効果がほぼ0%であった1。つまり、CO2濃度による増収効果は、地球温暖化による気温の上昇によって打ち消され、収量が減少すると考えられる。次に、品質について、「高温登熟障害」が課題となっている。水稲の登熟適温は20〜25℃であり、登熟期前半の平均気温が26℃を上回ると品質低下のリスクが増大するとされている。農研機構の発表によると、2022年の出穂日から20日間 (登熟前半) の平均気温が26℃を超える地域は、関東以西の標高が低い平坦地に広範囲に分布し、関東東部、北陸、東海、近畿地方などを中心に、28℃以上の高温の地域が認められており2、迅速な対応が必要である。これらのことから、気温の高い地域から順に地球温暖化に伴う水稲の収量および品質の低下が想定されるため、効果的な対策が求められる。
(3) 衛星データを活用した地球温暖化への対策
水稲の高温障害への対策として、高温耐性品種の開発、新たな栽培管理方法の導入、作期の調整などが検討されている。しかし、地球温暖化に伴う気温の上昇は、地形や標高、海からの距離、都市化の進行などにより地域差が見られるため、これらの対策を効果的に実行することは容易ではない。さらに、農地が集積して1人当たりの耕作面積が増加している現状で、圃場ごとに適切な栽培管理を行うことは、これまで以上に困難になると考えられる。そこで、人工衛星やドローンなどによって取得したリモートセンシングデータやIoT機器を活用した農業DXが活発化している。特に、衛星データは広域性や継続性といった利点を有し、広範囲に点在する圃場について過去から現在までの気象データや植生データ、土壌データなどを地上の観測装置を用いずに取得することが可能である。これにより、圃場ごとの精密な栽培管理が可能となる。
衛星データを活用した水稲の高温障害対策の可能性について、①栽培前②生育期③収穫期に分けて考察する。①栽培前について、圃場に最適な品種の選択や、品種に最適な圃場の選択、定植時期の調整などへの活用が期待できる。事前に栽培条件を整えることで、栽培期間中の管理コストを最小限に抑えることが可能である。②生育期について、水稲の生育を面的にモニタリングすることにより最適な施肥管理や水管理などへの活用が期待できる。それぞれ、IoT機器と組み合わせることで、管理のタイミングや量などを自動で調節することが可能となる。すなわち、水稲の高温障害に対する基肥・穂肥の量およびタイプの選択や深水管理、掛け流し灌漑などの対策を圃場ごとに適切に実施することが可能となる。③収穫期について、積算温度に基づく最適な収穫タイミングの推定への活用が期待できる。収穫タイミングが不適切な場合、未熟米や胴割れ米などの品質劣化が生じるため、衛星データを活用することで高品質な米の収量を向上させることが期待できる。
以上より、衛星データと農業技術を組み合わせた新たな栽培管理方法の開発と適用は、水稲の高温障害対策における重要な手段となり得ると考えられる。現状では、これらの技術の普及と効果的な活用にはさらなる研究と技術開発が必要であるが、未来の農業における持続可能性と生産性向上のために、これらの取り組みは不可欠であるといえる。
(4) 栽培実証
地球温暖化に対する対策として、衛星データの活用による「品種に最適な圃場の選択」および「適切な水管理」に焦点を当て、栽培実証を行った。具体的には、オンラインGISプラットフォーム「天地人コンパス」を用い、人工衛星から取得した気候パラメータを活用して日本全国から栽培適地を検討し、山形県鶴岡市を選出した。本実証では食味に優れる民間品種である“ふじゆたか”を供試し、適地選出は同系統品種の既存の高品質生産地と類似した条件の土地を探すアプローチを採用した(図1参照)。
(1kmメッシュで水稲の栽培適応度が表示されている)
気候パラメータは、地表面温度、日射量、および降水量を用いた。また、適切な水管理の一環として、適地として選出した圃場に株式会社笑農和の遠隔水位調整が可能な水門「paditch」を設置し、夜間の冷水の取り入れが水温に影響を与えるか検証し、自動制御を行った。その結果、10a当たりの玄米収量は600kgを超え、静岡製機 AG-RD食味計で計測した食味スコアは、トップブランドに比べて遜色のない数値を示し、衛星データ活用の有効性が示された。本実証で用いたアプローチは、異なる時間軸の場所間での比較においても適用が期待できる。すなわち、衛星データが過去の情報を蓄積していることから、過去の優れた生産地と類似した条件の場所を現在の土地から探し出すことが可能である。
今後は、人工衛星からの生育モニタリングを通じた適切な栽培管理の可能性を検討する。これにより、さらなる生産性向上と品質保持のための戦略を確立することが期待される。
(岡田和樹)
3 ブルキナファソにおける降雨観測および通知システム(活用事例2)
(1) 背景
急速な気候変動が取り沙汰される中、気候・気象条件の影響を強く受ける農業は従来の形態を維持することが一際困難になっている分野である。中でも水資源に関しては、人間活動で利用されている水の約7割が農業用水として使われているなど重要であり、降雨環境の変化は作付け品目や栽培時期、栽培方法などその土地の農業形態に直接的に影響し、農業を生業にする人々の生活を脅かしている。そこで重要になるのが、降雨パターンを正確に把握し、それに対応した適切な栽培管理作業を行うことである。降雨観測は衛星データなどを用いて行われるが、衛星の観測したデータを農作業に応用するためにはデータを適切に解析し運用する能力が必要であり、経済力のある先進国の企業が最先端システムの一部として活用するイメージが強かった。しかし降雨環境の変化に特に大きな影響を受けているのは降水量の不安定な地域や治水・灌漑管理が十分に行われていない途上国などである。
そこで本節では、サブサハラに位置し水資源が不安定で降雨環境変化の影響を強く受けるブルキナファソにおいて導入された、個人農家でも活用できる降雨観測システムについて紹介する。この事業において天地人は、国連開発計画(UNDP)主導のJapan SDGs Innovation Challengeプログラムの下、ブルキナファソの研究機関であるLaboratoire Matériaux et Environnement (LAME)を支援する形で、衛星で観測した降雨データの組み込みと、降水量情報を座標と照合し地図上で可視化する技術において、システム実用化に向けた技術支援を担当した。
(2) 降雨環境をめぐる現状
ブルキナファソにおける降雨パターンの変化は、単純な干ばつや降水不足だけでなく雨季の遅れや極端な多雨など様々で、これらが農業に大きな影響を及ぼしている。雨季の到来の遅れは、種子の枯死や生育不良、病虫害の過剰発生などを引き起こし、農作物の栽培に大きなダメージを与える。また、極端な多雨は洪水を引き起こし、作物の湛水による枯死や種子の流亡、成熟の遅れなどをもたらす。実際、2009年に発生した記録的な洪水では22万haの農地が被害に遭い42,000棟の家屋や15基のダムが破壊されたほか、2010年の干ばつでは感染症が流行し193人が死亡した上、長期にわたって人々の生活を苦しめた。ブルキナファソでは人口の7割が農業に従事し、GDPに占める農業生産額の割合は3割を超えるなど農業の重要性は非常に高く、農業の不安定化は国民の暮らしや国の安定性に直結する問題である。
(3) 限られたリソースでの降雨観測
降雨環境をめぐる影響を最小限に抑えるために重要となるのが降雨パターンの把握とそれをもとにした適切な栽培管理であった。しかしブルキナファソでは設置及び維持管理にかかるコストの問題などから十分な降雨予測をするに足る気象レーダーや雨量計は設置できていないのが現状で、先進国で用いているような降雨予測システムをそのまま適用するのは困難である。そこでLAMEによって開発されたのが、データ通信用電波を降雨観測に応用する技術である。これは電波信号の減衰程度が降雨量とよく相関していることを用いたもので3、この技術の最大の特徴は、携帯電話などの通信インフラとしてブルキナファソでも既に国土に張り巡らされているアンテナを用いている点である。しかしながら、この方法ではデータが電波のある場所に限定されてしまうため、衛星が観測した降雨データを以て補完し、全国の降雨情報を網羅することとした。降雨予測のために新たな設備を全土に導入するのが困難でも、国土に既に満遍なく行き渡っている通信用アンテナと衛星データを活用することで、追加コストを殆どかけずに観測網を広げ、全土で通用する降雨観測システムを構築することが可能になったのである(図2参照)。
(Laboratoire Matériaux et Environnement(LAME), Burkina Fasoの資料より筆者作成)
(4) 個人農家が使いやすいシステムの構築
このシステムにおける観測から農家への通知までのフローは次のようになる。まず通信ネットワークにおいて送受信される電波の強さの情報から電波の減衰程度を算出し、これを元に降雨状況のデータを作成する。次にこれを地理情報と照合し、降雨データを地図上に表示できるようにした上で、予め農地の位置情報を登録してある農家個人に、降雨状況や短期的な降雨予測をSMSなどで通知する。さらに、この降雨観測システムを有用なものにするためには、利用者である農家の人々が必要としている情報が、利用しやすい形で提供される必要がある。ブルキナファソの農家の人々の識字率は低く、気象情報に関する専門的な知識も乏しい。また降雨情報を受信するための新たな機器を導入するのも経済面で現実的ではない。そこでこのシステムでは、予め利用者の名前や農地の位置情報などを登録し、降雨データが各個人のスマートフォンに通知されるという方法が採用された。通知方法も文字や数値での情報ではなく、図3や図4のように図柄やグラフを用いることで直感的に情報を把握できるようなデザインに工夫がされている。
(それぞれ、a) 洪水, b) 平常, c) 渇水を、イメージ図および記号で表現している)
(詳細な位置を指定し、その場所の降雨・日射情報等の詳細情報が確認できる)
(5) 普遍的なシステムを目指して
このように、変化する降雨パターンの観測は、気象台などの代表点を設置して行う時代から圃場レベルでピンポイントに行う時代に変化している。またこの網羅的手法は、衛星データを活用した地理情報システムや既存の通信インフラを組み合わせることで大規模な専用設備を要さず低コストで導入でき、途上国の農村などへの適用を現実のものにした。衛星データの農業利用は最新設備を備え運用能力のある大規模経営体でのみ実現する傾向にあったが、公共衛星を用いて収集されたデータである以上、データの運用能力に乏しい個人農家でも利活用できる形へと情報を整理し提供されることが求められている。さらにこれらのシステムを広く普及させることで、個人農家による自発的なDX運用能力や栽培管理能力の向上が期待できる。今後はシステム使用者である個人農家からのフィードバックを収集しさらに使いやすく有効なサービスになるよう改良を継続していくことが重要である。このシステムを通じて、気象情報がより普遍的なものとして人々に受け入れられ、世界中の農業現場において、激しく変化する気象状況に対応できるような環境が整備されることを期待する。
(木村俊太)
4 ダムのDX化が農業開発に与える変革的な効果(活用事例3)
ダムは干ばつや洪水の被害を防ぐために、雨季の間に過剰な雨を貯水し、水資源が限られる乾季に安定した水を供給するなど、効率的な水資源管理を行う。さらに、地下水が利用しづらい地域での農業は、河川水や雨水などの地表水の利用に依存している。このような地域において、ダムは農業のインフラとして重要な役割を担っている。EUや世界自然保護基金、マギル大学(カナダ)により開発・運営されているGlobal Dam Trackerと呼ばれるデータベースは、世界中の35,000以上のダムの位置、流域、属性情報を集めている4。衛星データや機械学習など、さまざまな革新的なテクノロジーを使用して新しいデータが収集されている。このデータベースによる調査結果は、過去30年間にわたり、ダムが世界、特にアジアと南米の発展途上国における農業を支える重要な水資源である地表水の被覆率の劇的な増加に貢献してきたことを示している5。本稿では、ダムのDXが農業・農村開発に及ぼす影響、そして将来の更なる恩恵について探る。
(1) 水資源管理の強化
ダムのDXによる利点として、衛星データを駆使し、降水量・貯水量・水質などについての情報をリアルタイムで収集し分析することが可能になることが挙げられる。
図5は、国内の事例でも取り上げた「天地人コンパス」を活用して過去から現在までのダムの上空写真や、光学衛星の観測した光の波長を組み合わせて作成した水域を示す指標などを元に、ダムの水の面積を見て、水量を推定している。この衛星データで貯水量の変化もデータ化することができ、雨季から乾季にかけてどれほどのペースで貯水量が減少しているのか容易にモニタリングすることができる。これに加え、農村での気象情報・降雨量・植生指標などの衛星データを取得すれば、ダムを管理・運営する当局はこの情報を元に、農村間で公平な水資源の分配を確保するための水の放出と配分を判断することができる。
(中央にダムの貯水面積を示す)
(2) 国際間での水資源管理の強化
ダムのDXによるもう1つの利点としては、ダムのデジタルプラットフォームは水位情報・貯水量・堆積物量などの情報を複数の国がリアルタイムで共有することを可能にする。この技術を活用し、洪水によって危険になる場所を把握するためのハザードマップや船が航行できる水量があるかを確認するシステム、農業や浄水場での水質管理などに活用できる。東南アジアを代表するメコン川はチベット高原の源流から中国雲南省を通り、ミャンマーとラオスの国境、タイとラオスの国境、カンボジア、ベトナムを通って、南シナ海へと流れる国際河川である。上流の中国、ラオスでは治水や発電のためダムを多数建設し、上流河川の水量を支配しているため、下流域のタイ、ベトナムで、水量が主要な輸出品であるコメの生産を左右する。日経経済新聞の記事(2020年)によると、2019年から続いた干ばつ後にタイ、ベトナムの不作でコメの国際価格が急上昇したことをきっかけに、メコン川の洪水・干ばつに対応するため流域国とデータを共有するプラットフォームを整備すると中国首相が明かした6。水という限られた資源をより効率的に管理し、より多くの人々の生活を潤すためには、一つの国だけではなく国際的な計画・運用が必須である。ダムを管理・運営する当局はこの情報を元に、国際間で公平な水資源の分配を確保するための水の放出と配分を判断することができる。食糧農業機関(FAO)の報告書(2019年)によると、シリアを除くすべての近東および北アフリカ (NENA)諸国は、統合水資源管理 (IWRM) の実施に関する進捗報告を提供しており、水路情報のデジタル化により意思決定プロセスが合理化され、結果的に水管理の改善、農業における水の割り当てをめぐる紛争が減少したというデータが報告されている7。
(3) 今後の課題と期待
河川は上流から下流へ土砂を運搬しているが、ダムはこの流れを遮断し、時間の経過とともに泥状の堆積物が蓄積し、貯水スペースが徐々に減少している。国連大学の水・環境・健康研究所による新しい研究では、今世紀半ばまでにダムや貯水池の貯水能力が堆積物により約1.65兆立方メートル失われることが判明した8。この数字は、インド、中国、インドネシア、フランス、カナダの年間水使用量の合計に等しい。さらには、1930年から1970年にかけて建設された世界の 60,000基の大きなダムのほとんどは、耐用年数として想定された50年から100年が経過しており、決壊による影響は下流に住む世界人口の半数以上に及ぶ危険があると指摘されている。今後は、これらのダムを現代の基準へと改修し、効率的な運営を行い安全性を高めていく必要がある。
一方で、老朽化したダムを現代の基準に改修することは、水力発電・ダム業界がその管理をデジタル化する契機にもなり得る。水力発電の管理者、計画者、意思決定者がこの課題に取り組むため、EU の資金提供を受けた HYPOS プロジェクトは、効率的な堆積物管理を可能にするオンライン意思決定支援ツールを開発した。このツール (HYPOS eoPortalと呼ばれる地球観測ポータル) は、リアルタイムの衛星データや選択可能な期間における主要な水文データ、水質パラメータに簡単にアクセスでき、現在のデータや最近の季節データ、履歴データをオンデマンドで提供する9。衛星由来の分析と現場データおよびモデルデータを組み合わせることで、ポータル内の堆積物の輸送と堆積速度を簡単に評価することができる。ユーザーは、明確な空間データ、雲の範囲に応じて数日ごとに取得される地球観測データ、モデル化された水流と堆積物濃度情報に、現地調査より低いコストでアクセスできる。これにより、堆積物のベースラインと季節傾向の特定、堆積速度と流量の計算、貯水池における堆積物の動態と藻類の発生の監視など、多くの作業が簡素化される。DXはダムの管理のコストを減らし効率的に運営するだけではなく、国際的に水資源が必要な場所に必要な水量を分け与えることができる。
(米陀敬次郎)
5 おわりに
人工衛星からはセンサや波長などの組み合わせによって様々なデータを取得することが可能であり、本稿で取り上げた3つの事例に限らず農業・農村開発のあらゆる場面での活用が期待される。また、衛星データからは地球全体のデータを取得でき、国内で開発した技術の海外での応用にもつながるため、国内での積極的な技術開発が望まれる。一方で、衛星データの取得から活用までの一連の工程は、高度な専門性を必要とするため、一般のユーザーにとって衛星データの利用は難易度が高いという課題がある。最近は、日本においてもデータ取得だけでなくソリューション開発まで提供する企業が増えており、衛星データを利用するハードルは下がりつつある。しかし、データ利用者の理解が不十分なままソリューションを使用することは健全とはいえない。データ提供側からの一方的なソリューション提供は、本来の課題からの乖離や科学的に間違った技術の蔓延などに繋がりかねない。そのため、農業生産者や地方自治体への情報提供、データ解析のための人材育成、誰にでも使いやすいシステムの開発などが必要である。これらを通じて、衛星データの活用を推進し、農業・農村開発の効率化や品質向上を実現することが期待される。