2023.8 AUGUST 68号

前のページに戻る

Keynote 2

日ASEANみどり協力プランの意義について
~みどりの食料システム戦略を海外展開~

元農林水産省輸出・国際局審議官  松本 雅夫

1 はじめに

 2023年5月に開催されたG7(主要7か国)サミットにおいて、食料安全保障を含む首脳宣言並びに「強靱なグローバル食料安全保障に関する広島行動声明」が発出された。この行動声明では、ロシアのウクライナ侵略等で世界の食料安全保障が悪化していることを懸念し、食料の生産・供給体制を強靭化する必要があるとして、強靭で持続可能な農業と食料システムの確立のため生産性向上や環境に配慮した持続可能な農業を推進することを提起、これを実現するため幅広いイノベーション(技術革新)を推進していくことが明記された。

 また、G7サミットに先立って開催されたG7農相会合で合意された声明では、増え続ける世界人口を養うために十分で持続可能な生産を実現するとともに農業・食料生産による環境への負の影響を軽減し正の影響を高めていくことが不可欠であるとして、更なるデジタル化を含めた技術の拡大・普及などイノベーションを促進することが盛り込まれており、それが首脳宣言等に反映された形となっている。「生産性の向上と環境保全の両立」についてデジタル技術を含む「イノベーションで実現」すること、これが本報文のキーワードである。

 さらに、G7首脳会議で打ち出された広島行動声明において、農業関連のインフラ整備(灌漑を含む)の他、気候スマートな研究開発及びイノベーションへの投資促進、食料システムにおける更なるデジタル化への研究開発、民間投資の促進など具体的な技術が盛り込まれたことは画期的であった。特に、ロボット、AI、IoT等の先端技術やデータを活用したスマート農業の実用化、農業生産から食関連産業まで含めたデジタルトランスフォーメイション(DX)に関する技術革新が期待されている。

 このように食料安全保障に関心が高まる中、デジタル技術の活用を含む様々なイノベーションを通じて農業の生産性向上と環境保全の両立を図り、強靭で持続可能な農業、食料システムを実現することは、国際的に主流な考え方となりつつある。このことに伴い、農業と環境、補助金のあるべき姿を含む農業政策の枠組みについても従来とは異なる新たな国際的な議論が展開されている。

 政策展開の自由度を確保するためには国際的なルールメイキングの場において、我が国にとって望ましくないルールが採用されることを防ぐとともに、我が国が目指す姿を明確に打ち出し、国際会議等の場で賛同する国を増やすことが重要である。国際的なルールメイキングには、WTO協定や各種基準認証等に代表される狭義のものと国際会議等で議論の流れをリードして政策形成に貢献する広義のものと2種類あると考える。本稿では、農業をめぐるこれまでの国際的なルールメイキングの流れを整理するとともに、強靭で持続可能な農業・食料システムへの変革に向けた我が国の国際的な議論への貢献、特にASEANとの関係強化の取組について考察したい。

2 農業政策のグリーン化と国際的ルールメイキングの動き

 1980年代以降、農業をめぐる国際的な議論で中心となったのは農業補助金削減であり、貿易や市場歪曲性を中心として議論されてきた。1986年にOECDが農業保護の大きさを総合的に図る指標として農業政策による生産者への移転を計測するPSE(生産者支持相当量)を開発、PSEはガット・ウルグアイラウンド農業交渉においてAMS(助成合計量)として指標化され、貿易に悪影響がある国内助成として削減対象とされた(黄の政策)。

 その後、1990年代に入り、気候変動あるいは生物多様性に対する関心の高まりを受けて新たな議論が展開されるようになる。1992年に国連気候変動枠組条約(UNFCCC)が発効、2015年に採択されたパリ協定では温室効果ガス排出削減枠組が合意され、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて1.5度以内にとどめる目標が導入された。また気候変動と同じく人間活動の影響が大きい生物多様性の面では、1992年に生物多様性条約(CBD)が採択、2010年には愛知目標が採択され、2050年までに生態系サービスを維持し、生物多様性が評価、保全、回復、賢明に利用されることが合意された。

 こうした気候変動及び生物多様性に関する国際的な議論の高まりは、農業補助金を始めとする農業政策に影響を及ぼしていく。EUをはじめ欧米等の先進国では、施肥、農薬使用、家畜生産など、そもそも農業生産活動自体が環境に負荷を与えるものという考え方が主流となっている。生産性向上のため、化石燃料を用いる機械化、化学農薬・化学肥料の活用が進められてきたが、これらの不適切な使用等により農業は温室効果ガスの発生源として、生物多様性の喪失をもたらす環境負荷として問題視されるようになった。世界の温室効果ガス排出のうち農業及び林業に関連するものが全体の1/4を占め、主なものは、水田、家畜のゲップや排泄物等からのメタン排出等となっている。また、今後起きるであろう陸域の生物多様性の損失の7割が農業に関連するとされる。

 これらの視点に立てば農業生産は気候変動及び生物多様性など環境に悪影響を及ぼすもので、農業生産を刺激する補助金は削減すべきものという議論となりやすい。WTOにおいても、特定の国や地域での経済連携協定(FTA)が主流となる中で農業交渉は関税よりも国内助成の削減が焦点となっており、輸出国は従来の貿易歪曲性に加えて環境にも有害であるとして農業補助金の大幅削減を主張する。これに対し、EUや我が国等は、農業補助金が潜在的に環境に有害である点は既に国際的な共通認識となっている点を踏まえ、補助金削減に正面から反対するのではなく、農業補助金の環境コンプライアンス(環境保全を補助金の受給要件化)の強化等を図りつつ持続可能な食料システムに転換していくことが重要であると主張して政策的な裁量を確保する戦略をとっている。

 2015年、国連持続可能な開発目標(SDGs)として17の目標が設定され、「2030年までに栄養不足人口をゼロにする」ことが掲げられたが、国際連合食糧農業機関(FAO)が2022年に公表した「世界の食料安全保障と栄養の現状」によると2030年時点で世界人口の8%が飢餓に直面すると予測されている。つまり、増え続ける世界人口を養うには農業の生産性向上が不可欠なのだが、その生産性の向上は環境的な持続可能性と両立させる必要があるという政策課題が広く認識されるようになった。

 そのような流れの中、EUは2020年、持続可能な食料システムへの包括的アプローチとして、「Farm to Fork(農場から食卓まで)戦略」を公表した。目標年を2030年とし、化学農薬の使用及びリスクの50%削減、肥料の使用を20%削減、有機農業に利用される農地を25%とするなどを数値目標とし、この戦略をグローバルスタンダードにすることを目指している。

 かつてOECDにおけるPSEの議論がWTOにおいてAMSとして補助金削減の水準指標とされたことを想起すれば、農業と環境に関する国際交渉においても、受け身で抵抗するだけでは交渉の舞台で取り残されてしまうことが懸念される。数値目標の議論も含めて政策的な枠組みなど、持続可能な食料システムへの変革に関して積極的に国際的なルールメイキングに参画していくことが重要である。

3 みどりの食料システム戦略の制定

 農業と環境について、現行の食料・農業・農村基本法においても多面的機能の発揮が基本理念の一つとして位置づけられていた。農産物貿易自由化等の情勢の中、国民の理解を得るべく農業が有する外部経済効果として打ち出された。その後、農業の多面的機能は評価しつつ、これまで述べたように国際的には農業が環境に与える負の側面にどう対応するか関心が高まっていく。気候変動や生物多様性の保全等、地球規模の課題に取り組むことが世界の潮流となっており、我が国も2050年カーボンニュートラルに向けて農業も環境負荷を低減する産業へ転換することが求められている。

 EUはFarm to Fork戦略を打ちだしたが、我が国は欧州とは異なり、高温多湿というアジアモンスーン地域に属しており、その気候風土や社会経済条件に適した対応を行う必要がある。欧米のルールをそのまま適用する訳にはいかない。他方、欧州は農業と環境に関して着々とルールづくりに動いている。例えばEUの農産物に適用する環境基準をEUへの輸入農産物にも適用する可能性の他、気候変動、生物多様性、動物福祉(アニマルウエルフェア)を指標化する認証制度なども続々と打ち出されている。このような世界的な流れも踏まえ、我が国として欧米とは気象条件等が異なるアジアモンスーン地域における持続可能な食料システムのモデルを構築し、世界に発信することを通じて国際的なルールメイキングに参画していくことが重要である。

 農林水産省は2021年5月に農林水産業の生産性向上と持続性の両立をイノベーションで実現するための政策方針として「みどりの食料システム戦略」を策定した。「みどりの食料システム戦略」では、2050年までに目指す姿として、

・農林水産業のCO2ゼロエミッションの実現

・化学農薬の使用量をリスク換算で50%削減

・化学肥料の使用量を30%低減

・耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を25%(100万ha)に拡大

等の14の数値目標を掲げ、調達、生産、加工・流通、消費の各段階において革新的な技術・生産体系(イノベーション)の開発と社会実装を通じて実現していくこととしている。

 期待される技術としてデジタル分野では、スマート技術によるピンポイント農薬散布、データに基づく施肥管理の他、データ・AIの活用等が挙げられている。具体的なスマート農業技術としては、農機の自動走行技術、高精度な位置情報を活用した農薬、肥料散布量の低減、AIを用いた画像解析とドローンによるピンポイント農薬散布、ドローンや衛星によるセンシング等のデータを活用し土壌や生育状況に応じた可変施肥、水田水位などのセンシングデータを活用し給水バルブ・落水工を自動制御し正確できめ細かい水管理によるメタン発生量低減など多岐にわたる技術が含まれる。

 また同戦略においては、欧米とは気象条件や生産構造が異なるアジアモンスーン地域の新しい持続的な食料システムのモデルとして積極的に提唱し、国際ルールメイキングに参画する考えが盛り込まれている。以下、同戦略の海外展開について具体的に説明したい。

4 国際的な議論への展開:国連食料システムサミット

 我が国がみどりの食料システム戦略を掲げて国際的な議論の場に参画する最初の主要舞台が2021年に開催され国連食料システムサミットであった。SDGsの達成のためには持続可能な食料システムへの転換が必要不可欠だという、グテーレス国連事務総長の考えに基づき開催された。我が国はみどりの食料システム戦略を紹介するとともに、持続可能な農業生産及び食料システムについて東南アジア各国と閣僚レベルで合意した共同文書を紹介し議論に貢献した。この共同文書は、日本、カンボジア、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの各農相がオンライン閣僚会議を開催したうえで署名したもので、化学農薬及び化学肥料の削減方策を含め持続可能な農業・食料システムに至る万能(one-size-fits-all)な解決策はないこと、イノベーションが鍵となること、デジタルツール等のような革新的な技術を導入するため二国間及び複数国間の枠組みを通じて協力を促進・進化することを打ち出した。ここで複数国間の枠組みとしたのはアジアモンスーン地域のモデルとする観点からASEANを通じた協力を意識したためであり、ASEANを対象とした日アセアンみどり協力プラン(後述)へとつながっていく。

 この共同文書の意義は日本とASEAN主要国が閣僚レベルで合意したうえで地域の声として国際的な議論の場にインプットしたことにあり、万能の解決策ではないとしてEUが主導する戦略等が国際的なルールとなることを牽制する意図があった。この考え方は、国連食料システムサミットの成果として2021年9月にまとめられた事務総長サマリーにおいても、地域ごとの事情、状況を踏まえた食料システムが重要であり万能の解決策はないという趣旨が盛り込まれた。

 国際的な議論においては、このように積極的に議論の流れを創り出すことが意味を持つ。EUが農業環境保全に関して自らの戦略を世界標準にしようとする動きに対して、農業と環境保全は世界が共通して取り組むべきというゴールは共有するけれど、気候条件や社会経済情勢が異なるためEUの戦略をそのまま適用するのではなく、それぞれの国・地域に適した政策アプローチとして政策展開の自由度を確保する、そのキーワードがone-size-not-fits-all(万能の解決策はない)であり、輸出国を含む国・地域から広く支持を得た。

 もちろん、万能の解決策を否定するだけでは不十分であり、それぞれの国・地域に適した政策アプローチとは何なのか具体的に提案することが必要である。それが我が国の場合、みどりの食料システム戦略であり、これがアジアモンスーン地域のモデルになりうると発信しつつ議論を展開した。いったん認識されたコンセプトは、それ以降の様々な国際会議に横展開していくことが重要である。例えば、2021年のAPECは農産物輸出国のニュージーランドを議長国として食料安全保障ロードマップの策定が行われたが、我が国としても積極的に議論に貢献し、デジタルを含むイノベーションの重要性が主要な柱とされた他、農業と環境に関してone-size-not-fits-allの概念も盛り込まれた。

5 日ASEANみどり協力プラン

 世界食料システムサミットに合わせて日本と東南アジアが閣僚レベルで合意した共同文書において、持続可能な農業・食料システムに向けて革新的な技術を導入するため二国間及び複数国間の枠組みを通じて協力を促進・進化するとされており、ASEANを通じた協力の具体化を図ることとなった。ASEANを軸とした主な理由として、ASEAN+3(日中韓)農林大臣会合が毎年開催されており閣僚級イニシアティブ打ち出しの場として活用できること、長い協力の歴史に基づく信頼関係があること、通常のODAに加えて日ASEAN統合基金の活用も期待できること、ASEAN各国の合意形成にASEAN事務局の協力が期待できること、さらに2024年が日ASEAN友好協力50周年の節目の年であり、ハイレベルで協力関係を深化する絶好の機会となること等が挙げられる。

 イノベーションを活用した持続可能な農業への転換は、ASEAN各国も関心が高いテーマであり、アジア地域における農業分野からの温暖化ガスの排出量が多いこと、気候変動に伴い気温が上昇すると病害虫等による収穫量低下リスクが高まること、高温多湿なアジアモンスーン地域においては欧米とは異なる地域に適合した戦略が望ましいことなど我が国の意見に幅広く賛同が得られた。また、ASEAN事務局をはじめ複数の国で脱炭素戦略の策定が進んでおり農業部門における温暖化ガス削減に向けた協力プロジェクトに高い関心が寄せられた。

 2023年10月に開催されたASEAN+3農林大臣会合において我が国は野村哲郎大臣からASEAN地域への日本の協力イニシアティブとして「日ASEANみどり協力プラン」を打ち出し、ASEAN各国大臣の賛同を得た。

図 ASEANplus3農林大臣会合で発言する野村農林水産大臣
図 ASEANplus3農林大臣会合で発言する野村農林水産大臣


 同プランにおいては、アジアモンスーン地域は高温多湿な自然条件、水田主体の農業形態等の地域の特殊性を共有すること、強靭で持続可能な農業及び食料システム構築の重要性とそのための万能な解決策はないことを共通認識としたうえで、イノベーションにより環境負荷を低減しつつ生産性を向上させることを通じてASEAN地域における食料安全保障の確保に向け、強靭で持続可能な農業及び食料システムを構築することを目的と位置付けている。

 同プランにおいては、(1)技術の開発、実証、普及、(2)人材の育成、(3)ASEAN持続可能な農業ガイドラインの実施に向けた協力の3本柱を位置付け、個別の協力プロジェクトをリスト化し、プロジェクトリストは各国の関心・要望も踏まえて更新していくオープンエンドなイニシアティブとした。具体的な協力プロジェクトとして二国間、ASEAN等を通じた多国間、FAO等の国際機関と連携したプロジェクトなど実施中の26事業をリスト化しており、例えば農研機構、国際農研等が取り組む水田におけるメタンガス発生を抑制する水管理技術、ドローンを活用した病害虫防除、東南アジアにおけるスマート農業実証事業、気候変動に対応したかんがい排水施策等が含まれている。また、国際農研が取り組む窒素肥料の施用を大幅に減らしても収量を維持できるBNI小麦の開発等、国際的な研究協力にも期待が寄せられている。

 農林水産省においては、タイ農業協同組合省との間でスマート農業の推進に関する協力覚書に署名し、キャッサバの病害対策としてドローンで撮影した画像を診断してウイルス罹患の有無を判定するシステムや農業機械に装着する自動操舵システムの現地実証を含めた協力を進めているほか、アジア開発銀行と持続可能かつ強靭な食料・農業システム構築に向けたパートナーシップ強化のための協力覚書への署名を行うなど、みどりの食料システムの海外展開に向けて積極的に施策を展開している。

6 日ASEANみどり協力プランの意義

 最後に日ASEANみどり協力プランを含め、我が国がみどりの食料システム戦略を海外展開する意義について私見を交えつつ述べたい。

 農業と環境をめぐってEUがFarm to Fork戦略を策定し、この戦略をグローバルスタンダードにするべく議論を展開する中、我が国がみどりの食料システム戦略を策定し、ASEAN諸国などの賛同を得て連携・協力を打ち出すことは国際的な政策議論への参画という観点からとても意義深い。政策ツールである農業補助金について、かつて貿易・市場歪曲的であるとしてWTOでその削減がルール化されたが、これらの主張に加えて気候変動や生物多様性を含む環境に悪影響を与える農業補助金を廃止すべきとの議論が台頭している。環境に悪い補助金をやめることそのものに異を唱えることは困難だが、何が「環境に悪い補助金」なのか、その定義をめぐって様々な立場から議論が行われている。

 農業政策の環境への影響は地域の自然条件にも左右され一律に規制することは不適切で、それぞれの地域に応じた規律を採用することが望ましい。さらに、食料安全保障が課題となる中、農業補助金を単に削減するのではなく、生産性の向上と持続可能性を両立する方向に転換(re-orientation)する必要性が盛んに議論されている。国際的な議論の場においては、ただ反対するだけでは取り残されてしまうため、しっかりとした対案を発信し、賛同する仲間を増やし、農業補助金の削減を含めて不利なルールが国際標準となることを回避しつつ、我が国の主張が反映されるよう積極的にルールメイキングに参画することが重要であり、日ASEAN協力はその柱の一つとして期待される。

 また、生産性と持続可能性の両立にはイノベーションが鍵となり、生産現場でのスマート農業の実装のみならず生産から消費に至るデータ連携基盤の整備も含むデジタルトランスフォーメーション(DX)を促進することが不可欠である。そのためには民間部門を含めた投資を促進する必要があるが、日本の農業市場だけを対象とするよりも、東南アジアを含めた海外市場も視野に入れて技術開発するほうが規模の経済を活かした投資効果が期待できる。さらに、DXの分野ではデジタルデータをめぐる国際標準化の動きも活発となっており、例えばスマート農業機械に関連するデータのやり取りに関するルール、データとデータをつなぎ各種デジタルツール間で連携する基盤の仕組みやルールなどについてもアジアモンスーン地域の特性も踏まえて積極的に国際的な議論に参画することが期待されている。

 世界的に食料安全保障に関する関心が高まっている中、持続可能な農業・食料システムの構築に向けて引き続き我が国が積極的に国際的な議論に貢献していくことを期待している。

 なお、本稿に示されている意見は筆者個人に属し、農林水産省の公式見解を示すものではないことを申し添える。

(参考)日ASEANみどり協力プランの概要

(2022年10月26日公表)


ASEANとの協力強化に向けた日本の提案
地域の食料安全保障を強化するための強靭で持続可能な農業及び食料システムの強化に向けて

(日ASEANみどり協力プラン)


1.背景(略)

2.協力の方向性(略)

3.協力の範囲

i) スマート/デジタル農業、循環型経済、バイオマスエネルギー、温室効果ガス(GHG)排出削減、総合防除(IPM)などのイノベーションにより、強靭で持続可能な農業及び食料システムを構築するための技術の開発、実証、普及

ii) 強靭で持続可能な農林業・食料システム構築のための人材育成

iii) ASEANにおける持続可能な農業のためのASEANガイドラインの実施に向けたその他の支援

4.結論 (略)


(別添1)現在実施中の事業

i) スマート/デジタル農業、循環型経済、バイオマスエネルギー、温室効果ガス(GHG)排出削減、総合防除(IPM)などのイノベーションにより、強靭で持続可能な農業と食料システムを構築するための技術の開発、実証、普及

✓ ASEAN ライスネットのための JAIF(日・ASEAN 統合基金)能力構築プログラム

✓ アジアの灌漑稲作システムにおける温室効果ガス削減(MIRSA)

✓ アジア・モンスーン地域における生産能力を向上させ、持続可能な農業と食料システムを確保する農業技術の応用の加速

✓ 日本の農林水産省拠出による、土壌の炭素貯留とメタン排出削減のための能力を強化するFAOのプロジェクト

✓ 東南アジアにおける持続的な農業及び食料システムの構築に向けた官民連携プロジェクト

✓ 東南アジアにおけるスマートアグリパイロットプロジェクト東南アジア地域持続的漁業推進プロジェクト

✓ 東南アジアにおける ASEAN-JICA IUU 漁業対策能力向上プロジェクト

✓ JICA 知識共創プログラム:農産物輸出のための植物検疫技術の実践(果実のハエの駆除のための熱処理技術)

✓ アジア太平洋地域における越境的植物病害虫の侵入及び拡散に対する防護のための能力開発

✓ 東南アジア大陸における外来性昆虫害虫トマトキバガに対処するための調整改善と能力強化

ii) 強靭で持続可能な農林業及び食料システム構築のための人材育成

✓ 日本の林野庁拠出による、木材生産国における持続可能な木材利用の促進に関する ITTO プロジェクト

✓ 日本の林野庁及び外務省拠出による、木材生産国における持続可能な森林経営のための能力構築に関する ITTO プロジェクト

✓ 持続可能な森林経営に関する JICA 技術協力プロジェクト

✓ 東アジア植物品種保護フォーラム

✓ 日・ASEAN 連携による GAP 理解度向上推進事業

✓ ASEAN 各国におけるフードバリューチェーン構築支援のための農民組織能力向上プロジェクト(CBF プロジェクト)

✓ ASEAN 地域の大学との連携による食料関連分野の人材育成プロジェクト(日本)-フェーズ3

iii) ASEAN における強靭で持続可能な農業及び食料システムのための ASEAN 地域ガイドラインの実施に向けたその他の支援

✓ バイオエネルギー及びその副産物を活用した循環型経済の構築に関するプロジェクト

✓ 安定した食料システムの構築と灌漑・排水施設に関する気候変動適応策・緩和策の開発

✓ ASEAN 地域におけるマングローブ生態系管理

✓ 東南アジアにおける水産業からの海洋ゴミ排出のモニタリングと削減のための地域共同研究及び能力開発

✓ ASEAN RAI(ASEAN 版責任ある農業投資)ガイドライン実施のための学習・認定プログラムの作成と実証

✓ 東南アジア地域におけるポスト COVID-19 社会におけるフードバリューチェーン開発に関するデータ収集調査

✓ CLMV 諸国における水利用組織間の農地灌漑管理の開発及び促進に関する優良事例の共有

✓ ASEAN 諸国における強靭で持続可能な農業食料システムの構築と強化に関する研究プロジェクト


(別添2)今後開始される予定の事業

1.スマート/デジタル農業、循環型経済、バイオマスエネルギー、温室効果ガス(GHG)排出削減、総合防除(IPM)などのイノベーションにより、強靭で持続可能な農業と食料システムを構築するための技術の開発、実証、普及

✓ 気候変動に強い農業及び低炭素食料システムに対する民間部門の関与と投資の増加

✓ ASEAN 地域における強靱で持続可能な農業と食料システムのための近代的で地球に優しく清潔な技術に関する情報共有

✓ 収穫後ロス削減と農業機械化のための活動

✓ デジタルと精密農業のための活動

✓ バイオマスエネルギー利用の近代化技術の向上

2.強靭で持続可能な農林業と食料システム構築のための人材育成

✓ ASEAN 地域における食のイノベーション拠点の開発と運用のための活動

3.ASEAN における持続可能な農業と食料システムのための ASEAN 地域ガイドラインの実施に向けたその他の支援

✓ ASEAN JICA フードバリューチェーン開発プロジェクト

✓ 強靱で持続可能な農業と食料システム実現のために AMS を支援する民間部門支援のための活動


前のページに戻る