カンボジア/提供:FIカンボジア/提供:FIDR
カンボジア/提供:FIDR

編集後記

 水と食料の過不足を考える際の大枠は、世界の地域とその合計の数値になります。今号でも、そのように展開されています。しかし、執筆者の方々がその向こうに見ているのは、どこの地域、あるいは国がもっとも食料不足に陥りやすいか、そしてそれを回避するための農業開発に、日本をはじめとする先進諸国がどのように貢献していくべきか、ということではないでしょうか。
  マクロでみれば食料の総生産量は増加してはいますが、1人当たりにするとまったく楽観はできません。たとえば穀物生産量は1950年前後は250kg弱、以後1970年代前半には300kg台に安定して、80年代は330−340kg台を中心に推移し、2000年代前半には漸減を始めて310kg前後になってしまいました。総灌漑面積は2000年代で既にピークを迎えた様相で、1人当たりでは当然に減少しています。タンパク資源としての1人当たりの漁業生産量も同様の傾向にあります。
  農業生産にとっても、もちろん気候変動は概して望ましくない事態ですから、炭素排出量の削減は重要な世界的課題です。しかし、「水と食料の不足」をいかに回避していくかという課題についても、まさに人類生存のために世界規模で取り組むべきでしょう。
  最後に『水不足が世界を脅かす』(サンドラ・ポステル著)の一節をご紹介いたします。「世界の河川の多くは狂暴で、水がもっとも必要なときに流量が少なく、もっとも必要のないときに多い。地球は水の惑星かもしれないが、だからといって人間がたやすく水を利用できるわけではない」

編集委員

委員長  塩田克郎 
委 員  渋澤孝雄 内藤久仁彦 馬目雄一 岩本 彰 

※画像は、国際開発救援財団(FIDR)・国際協力機構(JICA)・著者から提供されたものです。
※撮影は渋谷敦志さん:エチオピア(JICA提供)/今村健志朗さん:フィジー、ブルキナファソ、マリ(JICA提供)。カンボジアはFIDR提供。
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