( 東ティモール 写真提供:今村健志朗/JICA)
編集後記
海外技術協力はまさに現地の気候と風土、そして価値観と向き合って、差異を認識して、そこから歩み寄ってゆき、協力をしてゆくという心身ともにハードな仕事です。おそらく性格的に「向き」、「不向き」もあるのでしょう。そして、「向き」の方は「はまってしまう」ことも少なくないようです。
今回、特集を執筆いただいた方々もそのようです。「異国を理解することが、自国を改めて理解することにつながる」、あるいは「異質の文化を認める寛容性につながる」と述べられています。また、「正直、彼らの農業は20〜30年前の日本の農業である。それだけに暖衣飽食に浸ってしまった私たちに、農業や食べ物を尊ぶという忘れられつつある精神をよみがえらせてくれる」とも。さらには、「脆弱なガバナンス能力は植民地時代の統治機構を引きずっているのではないだろうか。これを是正しない現地の政府も、それを指摘しないドナーの考えも理解できない。こうした脆弱性のなかで、民民のマイクロ・クレジットの創設者であるユヌス教授がノーベル平和賞を受賞したことは、この国の農村開発の正しい方向性という視点からは、複雑な気持ちである」とも述べられています。
大学や公務員を定年退職されたあとも、かつての赴任国を度々訪れる、あるいはほぼ定住してしまう。さらには、途上国の留学生を何かと私的に支援しておられる。こうした「はまった」方々の生き方は、また素晴しいものです。金銭ではない、琴線に触れる何かが、国際協力にはあるようです。提供していただいた写真も、このことをよく物語っています。人と人が理解し合う、そこから生まれる和やかな表情が素晴しいと思います。
編集委員
委員長 塩田克郎
委 員 渋澤孝雄 内藤久仁彦 馬目雄一 岩本 彰
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※画像は、国際協力機構(JICA)・著者から提供されたものです。
※撮影は大野篤志さん撮影:ケニア/今村健志朗さん撮影:マリ、ガーナ、東ティモール。
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