2024.8 AUGUST 70号
Keynote 1
みどりの食料システム戦略に基づく今後の政策展開について
(前)農林水産省大臣官房環境バイオマス政策課地球環境対策室 室長 続橋 亮
1 国連気候変動枠組条約(UNFCCC)
国連気候変動枠組条約(UNFCCC)は1992年5月に採択され、1994年3月に発効した条約であり、締約国数は198か国・機関である。大気中の温室効果ガス(二酸化炭素、メタンなど)の濃度を安定化させることを究極の目的とし、本条約に基づき、1995年から毎年、気候変動枠組条約締約国会議(COP)が開催されている。
1997年の京都議定書の採択を経て、2015年にはパリ協定が発効し、先進国、途上国の区別なく、全ての国が温室効果ガス排出削減等の気候変動の取組に参加する枠組みとなった。パリ協定では、温室効果ガス排出削減(緩和)の長期目標として、気温上昇を2℃より十分下方に抑える(2℃目標)とともに1.5℃に抑える努力を継続すること、そのために今世紀後半に人為的な温室効果ガス排出量を実質ゼロ(排出量と吸収量を均衡させること)とすることが盛り込まれた。また、同協定7条等に基づき、すべての国が全ての国が温室効果ガスの排出削減目標を「国が決定する貢献(NDC)」として5年毎に提出・更新する義務があり、日本は、2030年までに2013年比46%削減を掲げており、さらに、50%の高みに向け、挑戦を続けていくこととしている。
近年、メタン削減をはじめとして気候変動と食料・農業分野の関係が大きく注目を浴びており、昨年ドバイで開催されたCOP28(締約国会議)でも、議長国であるアラブ首長国連邦(UAE)が食料・農業分野の持続可能な発展と気候変動対応の強化を目的とした「持続可能な農業・強靭な食料システム・気候変動対応に関する首脳級宣言(エミレーツ宣言)」が発出され、現在、我が国も含めた150カ国以上が参加している。
著者はドバイで開催されたCOP28に、政府代表団として参加しており、その時の経験も踏まえ、同宣言やその後の動きを含め、それに対応するためのみどりの食料システム戦略に基づく今後の政策展開について、本稿では説明する。
2 COP28の結果概要
COPは大きく分けると条約交渉に係る本体会合と、各国の取組等を紹介するサイドイベントの二つから構成される。ここでは、農林水産関係の本体会合として (1) ~ (5) まで、サイドイベントとして (6) ~ (10) までを紹介する。
(1) 気候変動と食料システムに関する首脳級宣言(エミレーツ宣言)発表(12 月1日)
首脳級セッション「世界気候行動サミット」において、議長国 UAE の主唱により、食料・農業分野での気候変動対応の取組を強化するための協働を呼びかける「持続可能な農業・強靭な食料システム・気候変動対応に関する首脳級宣言」(エミレーツ宣言)が発表され、我が国を含む 159ヶ国(12 月 18 日現在)が参加した。
エミレーツ宣言公表時の会合では、アルムハイリ UAE 気候変動大臣及びビル・ゲイツ氏による冒頭スピーチに続き、UAE 環境庁長官、屈・国連食糧農業機関(FAO)事務局長、国際農業研究協議グループ(CGAIR)代表等によるパネルディスカッションと首脳級4名によるスピーチが行われた。首脳級スピーチでは、ジョコ・インドネシア大統領、メローニ・イタリア首相、マタファ・サモア首相、ブリンケン米国国務長官が登壇した。エミレーツ宣言の骨子は以下のとおりである。
【目的】
食料・農業分野の持続可能な発展と気候変動対応に向けた迅速な変革に向け、2025年までに以下の 行動を強化。
【行動分野】
①COP30(2025年)までに各国の国家適応計画等へ食料システム・農業を統合
②食品ロス・生態系の損失・温室効果ガス排出の削減、所得・生産性の向上等に向けた公的支援の再検討
③民間を含む、あらゆる形態の資源動員の拡大
④持続可能な生産性の向上を目指した科学・証拠に基づくイノベーションの推進
⑤WTOルールに基づく公平で透明性の高い多国間貿易システムの推進
(2) 「世界全体でパリ協定の目標に取り組むための日本政府の投資促進支援パッケージ」公表(12 月9日)
12 月9日、1.5℃目標の実現に向けて、急速かつ大幅な削減の実現が必要とされる中、我が国から、伊藤信太郎環境大臣が「世界全体でパリ協定の目標に取り組むための日本政府の投資促進支援パッケージ」を発表。この中には、「日 ASEAN みどり協力プラン」に基づく取組(官民の協議体の設立を通じた協力案件の形成等を含む)や農業及び森林分野の二国間クレジット制度(JCM)等、当省関係の取組が盛り込まれている。
(3) グローバル・ストックテイク
グローバル・ストックテイクとは、2030年のNDC達成に向けた各国の取組状況を共有するものであり、COP28のハイライトの一つである。ここで、化石燃料の段階的廃止(Phase-out)という表現をめぐり各国で大きな綱引きがあったが、最終的には脱却(Transition away)という表現に落ち着いた。
グローバルストックテイクに係る決定文書では、2025 年までの排出量のピークアウト、全ガス、全セクターを対象とした野心的な排出削減、分野別貢献(再エネ3倍・省エネ改善率2倍、排出削減対策が講じられていない石炭火力の逓減加速、エネルギー部門の脱・低炭素燃料の使用加速等)などが明記された。このうち農林水産関連では、①持続可能な農業及び強靭な食料システム等の実現や、気候強靭な食料・農業生産及び食料の供給・分配や持続可能で再生的な生産、十分な食料・栄養への公平なアクセス等の実現、②パリ協定の1.5度目標達成に向け、2030 年までに森林の消失と劣化を食い止め、その状況を好転させるための取組の強化や、吸収源及び貯蔵庫として機能する陸域・海洋生態系及び生物多様性の保全の重要性、③メタンを含む非CO2ガスについて2030年までの大幅な削減の加速、④海洋・沿岸生態系の保護・修復及び海洋に基づく緩和や、海洋に基づく適応・強靭性対策を通じた気候変動リスクの低減等の内容が含まれている。
(4) パリ協定第6条(市場メカニズム)に関する議論
パリ協定第6条4項は市場メカニズムといわれ、京都議定書のクリーン・デベロップメント・メカニズム(CDM)を引き継ぐ仕組みである。CDMとは、締約国会議とCDM理事会が定める規約や方法論に従い、途上国での省エネ・新エネなどに投資し排出削減が確認された場合に、投資事業者はCER(Certified Emission Reduction)というクレジットを得られるという仕組みであり、日本政府や日本企業も活用した仕組みである。
市場メカニズムに関しては、国連への報告等に関する詳細事項について見解の一致に至らず、引き続き議論されることとなった。
(5) シャルム・エル・シェイク共同作業
COP27で立上げが決定された「農業・食料安全保障に係る気候行動の実施に関するシャルム・エル・シェイク共同作業」では、COP28期間中に開催された補助機関会合において、その具体的な実施について協議が行われましたが、先進国・途上国間で議論が収れんせず、次回の補助機関会合(2024年6月)に持ち越しとなった。一連の会合では、我が国からは「みどりの食料システム戦略」の経験を踏まえたインプットを行うなどして議論に貢献した。
(6) アジアモンスーン地域における農業分野の温室効果ガスの削減とイノベーションセミナー
12月10日、議長国・UAE の主導で「食料・農業・水デー」が開催され、ジャパンパビリオンにおいて ASEAN 地域との連携深化とJCM形成等を目的とした「アジアモンスーン地域における農業分野の温室効果ガスの削減とイノベーション」セミナーを実施した。
冒頭、宮下一郎農林水産大臣のビデオメッセージにより「みどりの食料システム戦略」に基づく国内の取組及び「日ASEANみどり協力プラン」を紹介するとともに、同プランの実装を進める一環として、官民の協議体を設立し、取組を後押しすることを打ち出した。その後、マリア・ヘレナ・セメドFAO事務局次長が基調講演を行い、気候変動と農業に係る課題についてイノベーションと国際協力の重要性を強調の上、「日ASEANみどり協力プラン」の下での持続可能な農業に係るアジアモンスーン地域内の連携について歓迎の意向が示された。
ASEAN地域からは、セン・バン・カンボジア農業省局長、タッサカ・サファソン・ラオス農業林業省・計画協力局長、ハリス・シャブディン・インドネシア農業省・農業標準化庁総局長が参加した。日本側からはサグリ株式会社から坂本和樹ASEAN事業責任者、味の素株式会社から武内祥平アミノサイエンス事業本部CFS事業戦略推進グループ長、石崎貴紘株式会社フェイガー代表取締役がそれぞれ参加した。参加者によるプレゼンテーションやパネルディスカッションを通じて、ASEAN地域の抱える課題やその解決に資する日本企業の技術などが紹介されるとともに、日ASEANみどり協力プランを元に具体のプロジェクトを早期に形成していくとの結論を得た。なお、筆者は本パネルディスカッションのモデレーターを務めた。
会場では、「見える化」の取組について説明したバナーと「見える化」の表示を付した米を展示し、世界に向けて我が国の「見える化」の取組を発信。本セミナーには、会場、オンライン合わせて約150名の視聴があった。なお、セミナーは農林水産省の公式Youtubeでも配信されている。(https://www.youtube.com/watch?v=gBmxY1YFlx0)
(7) JCM 関係国際セミナー(12月3日)
12月3日には、環境省・当省・タイ・チリ政府他と合同で JCM 関係国際セミナーが開催され、JCMの活用による農業分野の温室効果ガス削減の可能性や、当省のアジア開発銀行(ADB)への拠出による関連プロジェクトの立上げ等について発信した。
(8) エミレーツ宣言実行ハイレベルイベント(12月10日)
エミレーツ宣言の実行に関する閣僚級会合が開催され、アルムハイリUAE気候変動大臣から、同宣言の署名国が152か国(12月18日現在で159か国)に達したことが発表された。また、ヴィルサック米国農務長官、ミッチェル英国開発担当閣外大臣、フェノー・フランス農業・食料主権大臣、ミュラー・ドイツ食料・農業政務次官、ミランダ・ブラジル開発革新大臣ほかの各国政府・国際機関のハイレベルが登壇し、フラティン・イタリア環境大臣、モハメド国連副事務総長からビデオメッセージが寄せられた。会合においては、COP30(2025年)に向け、各国や関係国際機関が協調して気候変動対応を強化していくとの共通認識が確認された。
(9) アジアモンスーン各国との農業共同研究に関するセミナー(12月10日)
AIM for Climate(※1)関連のイベント内で、当省主催により、国際農研(JIRCAS)によるアジアモンスーン各国への技術の応用促進の取組(グリーンアジアプロジェクト)を紹介するセミナーを実施した。国際農研より技術カタログによる情報発信、国際科学諮問委員会の開催、各国研究機関との共同研究による技術の応用促進等のプロジェクトの概要と、ネパールにおける BNI 強化コムギの栽培実証研究を紹介するなど、日本の取組の周知と、更なる連携に取り組む旨を発信した。
(10) その他
①メタンサミット(12月2日)
メタンに係るハイレベルのサイドイベントとして、米国、UAE、中国の共催により「メタンサミット」が実施された。その中では、米国ケリー気候変動問題担当大統領特使より、途上国への2億ドルの資金支援を目標として 2023年4月の「エネルギーと気候に関する主要経済国フォーラム(MEF)首脳級会合」(※2)で立ち上げられた「メタン資金スプリント」について、現時点で10億ドルを超える貢献があったことが報告された。
②グローバル・メタン・プレッジ閣僚級会合(12月4日)
COP26で立ち上げられたグローバル・メタン・プレッジ(※3)について、定例の閣僚級会合が 開催され、米国ケリー気候変動問題担当大統領特使から、国際的なメタン排出削減に向けた取組の進捗状況が報告された。また、米国及びEU等からは、エネルギー分野のメタン排出削減に係る国内の取組が紹介された。
③AIM for Climate 関連セミナー(12月9日、10日)
COP26で立ち上げられた本件イニシアティブを推進してきた米国ヴィルサック農務長官とUAEアルムハイリ気候変動大臣の対談等が複数回開催された。本イニシアティブの参加国がCOP27時点との比較でも、官民による投資総額(80億から170億米ドルに増)、官民合わせた参加国・機関数(270から600以上に増)などが倍増していること等が紹介された。また、UAEからは、今後、AIM for SCALEと称した、農業技術の普及をスケールアップさせる取組み等を強化することが表明された。
④水に強靭な食料システムに関する閣僚級対話(12月10日)
UAE及びCOP30議長国のブラジルの主導により、「水に強靭な食料システムに関する閣僚級対話」が開催され、水資源の確保を含め気候変動が農業にもたらす脅威を強調の上、水の効率的利用を促進するためのイノベーション及び国際協力の必要性が呼びかけられた。
(※1)AIM for Climate
・気候変動に対応するための農業・食料システム分野におけるイノベーションを加速するための国際イニシアティブ。(米国・UAE 主導)
(※2)エネルギーと気候に関する主要経済国フォーラム(MEF)
・2009年、オバマ大統領(当時)主導により、温暖化対策を議論する多国間会合として発足したフォーラム。
・正式名称:Major Economies Forum
(※3)グローバル・メタン・プレッジ(GMP)
・世界全体のメタン排出量を2030年までに2020年比 30%削減することを目標とする国際イニシアティブ。(米国・EU 主導)
・正式名称:Global Methane Pledge
3 みどりの食料システム戦略に基づく今後の政策展開
以上がCOP28の概要であるところ、ここでは、こうした結果を受けて我が国として農業・食料分野に基づくカーボン・ニュートラルの取組みをどのように進めていくか説明する。
(1) 日ASEANみどり協力プラン
日ASEANみどり協力プランは、昨年10月4日、マレーシア(クアラルンプール)で開催され、宮下農林水産大臣が参加した日ASEAN農林大臣会合で採択された、日本とASEANの農業生産力向上と持続性の両立、ひいては食料安全保障を進めていくための協力枠組みである。持続可能な食料システムを実現するためのフレームワークについては、欧米やグローバルサウスなどでも民間も含めて、グローバルスタンダードを目指した苛烈な主導権争いがなされている中で、高温多湿で病虫害のリスクが高く、水田農業を中心とし、小規模農家が多くを占めるアジア・モンスーン地域内の協力を進め、日本の技術の国際的普及、日本企業の海外展開の促進を目的としている。
本プランは、昨年東京で開催された日ASEAN友好50周年記念特別首脳会合の成果文書にも盛り込まれており、日・ASEAN統合基金(JAIF)なども活用し、政府が一体として盛り込まれたプロジェクトを実現することとしている。
(2) 日ASEANみどり脱炭素コンソーシアム
日ASEANみどり協力プランに基づく取組の一つとして、主にアジアモンスーン地域における農業分野の脱炭素プロジェクト形成・実行を後押しするため、官民の関係者から構成される「日ASEANみどり脱炭素コンソーシアム」が本年3月1日に設立された。
設立総会に引き続いて開催された記念セミナーでは、舞立昇治農林水産大臣政務官が冒頭挨拶を行うとともに、WFPラオス事務所長のマーク・アンドレ氏が基調講演を行った。日本企業からも、国内で有機農業の販売・新規就農支援を行い、ラオスでアグロフォレストリーを通じたコーヒー栽培を行っている(株)坂ノ途中社の小野邦彦CEOがプレゼンテーションを実施した。現在、関係省庁、独立行政法人、民間企業などで51者が参加している。
本コンソーシアムでは、本年11月に開催される気候変動枠組条約第29回締約国会議も見据え、会員間の情報共有やマッチングを進めることにより、日本の技術や経験を生かした協力プロジェクトを実施していくこととしている。記念セミナーは農林水産省の公式Youtubeでも配信されている(https://youtu.be/MQC5WsEaEMs?si=UYyMZXbKdQP36Mqd)
(3) 間断灌漑によるJCMプロジェクト
日本では水田メタン削減に大きく寄与できる技術である、水田の中干し期間の延長が政府が運営するカーボン・クレジットであるJ-クレジットに昨年方法論として追加され、既に7社がプログラム運営事業者としてJ―クレジットのプロジェクト登録を受けている。本技術は、農家の追加負担なく取り組めるものであり、かつ、その効果も水田から発生されるメタンの3割を削減できるなど、非常に大きなインパクトを持つものである。なお、プログラム型とは、運営事業者が複数の農家を取りまとめて一括でプロジェクト登録やクレジットの認証を受ける仕組みで、既に2社で1万トンを超える削減量がクレジットとして認証され取引されている。
水田中干しは通常の中干しを1週間延長するものだが、ASEAN地域では、湛水と落水を繰り返す間断灌漑(AWD)が普及しており、JIRCASなどの実証では、AWDの実施により4割メタンが削減された例も確認されている。現在、農林水産省からアジア開発銀行(ADB)への拠出金事業として、同銀行によるフィリピン・ベトナムを対象としたJCM化のための有識者委員会が開催されており、6月中にも方法論素案のパブリックコメントが実施される予定となっている。
なお、JCMとはパリ協定6条2項に基づく二国間の削減メカニズムで、例えば日本政府や企業が実施したプロジェクトにより発展途上国で温室効果ガスを削減し、クレジット化した場合に、その全部又は一部を相手国政府の同意を得て移転の上、日本のNDCの達成等に活用できるしくみで、既に日本は29カ国とJCM協定を締結している。省エネ・再エネ・森林(REDD+)は実績があるものの、農業分野の方法論・プロジェクトはまだ存在せず、登録された場合ASEAN地域では初の農業分野の取組みとなる。
(4) その他
本年3月1日、農業生産段階の温室効果削減・生物多様性の保全の取組をラベル化する「見える化」の本格運用が開始された。これは、政府が昨年実施した調査によると、環境負荷低減の取組に係る農産物を消費者の8割は購入したいという潜在的な意向はあるものの、多くがどの商品が対象かわからず購入を断念しているという実態も踏まえ、消費者に対して生産者の環境負荷低減の努力を「見える化」し、選択に資するコミュニケーションツールとして農林水産省が提供するものである。こうしたコミュニケーションツールは、フランス政府や欧州に拠点を置き、ネスレやダノンなど欧米の大手食品企業などが参加するファウンデーション・アースなども取り組みを進めており、デファクト・スタンダードの確立の思惑も複雑にからまり、情勢が常に変化する分野である。
日本は現在、G7宮崎農業大臣会合の際にヴィルサック米農務長官と野村哲郎農林水産大臣の間で立ち上げられた「持続可能な農業に関する日米対話」を通じて、消費者コミュニケーションの手法について共同で研究を進めることとしており、第1回は本年2月1日に東京で開催された。両国は、今年開催が予定されているAPECやCOP29などの国際的な枠組みを念頭に、日米共同でイベントを実施し、日米の温室効果ガス削減等に関する議論の成果を共同で国際的に発信していくことなどを確認しました。さらに、次回会合は今年中に米国で行うことで合意しました。
また、硝酸化抑制効果のある物質を作物が放出し、一酸化二窒素として大気中に出るのを防止する生物的硝化抑制(BNI)機能を活用したBNI強化コムギなどはJIRCASが世界に先んじて実用化に取り組んでおり、この分野での貢献も大きく期待されている。
4 最後に
世界の温室効果ガス排出量はCO2換算で約520億トンであり、その約三分の一が食料農業分野から排出されているといわれている。日本の排出量は合計約11億3,500トンであり、農業分野はそのうち4.2%で4,790トンに過ぎない。このため、国内で削減する努力を進めることはもちろんだが、日本がアジア・モンスーン地域を中心に食料農業分野の国際的な削減に日本が積極的にコミットしていくことが必用とされている。
それに加え、食料・農業に係る環境分野は、今や国際的な農業関係の議論の中心であり、適切な議論への参画により、各種先進的取組の国際的な認知向上を図ることで、我が国の環境対応への評価を確立するとともに、その先の協力案件形成を通じた我が国企業のビジネス拡大なども視野に入れた戦略的な取組を、官民一体で取り組んでいく必要がある。