2024.8 AUGUST 70号
特集│気候変動に対応した農業農村開発協力について
Contents
│特集│気候変動に対応した農業農村開発協力について
地球温暖化の進行に伴い、世界はかつてないリスクを抱えている。気候変動は台風や猛暑、豪雨など自然災害の激甚化をもたらし、グローバル化した経済活動の中で私たちの生きる基本となる食を脅かしている。2050年までの温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指し、農業分野でも世界各国で温室効果ガスの削減が求められる今、世界の農業農村開発の現状や課題、時代に適応した持続可能なあり方などを専門家の多様な視点で探っていく。
海外情報誌企画委員会 委員長 角田 豊
独立行政法人 国際協力機構(JICA) 国際協力専門員 三次啓都
特集テーマに関連する各専門分野の有識者、先駆者などによる幅広い知見、最先端の取組などを紹介します。
Keynote 1
COP28とエミレーツ宣言への対応とみどりの食料システム戦略に基づく今後の政策展開について
(前)農林水産省大臣官房環境バイオマス政策課地球環境対策室 室長 続橋 亮
Keynote 2
作物による土壌の硝化抑制で地球環境にやさしく、効率のよい食料生産を目指すBNI技術の進展
(国研)国際農林水産業研究センター BNIシステムプロジェクトリーダー 吉橋 忠
社会科学領域長兼グリーンアジアプロジェクトリーダー 舟木康郎
Keynote 3
中干し期間延長によるJ-クレジット創出とカーボンクレジットを活用した国内・海外展開について
―Green Carbon社の取組み事例―
Green Carbon株式会社 大北 潤
井家良輔
世界の農業農村開発や特集テーマに関係する団体・個人による実践的な取組や、現地・現場の動向、今後の予定などを紹介します。
REPORT & NETWORK
アジア開発銀行(ADB)における気候変動への対応と農業農村開発協力
(前)アジア開発銀行南アジア局長 横山謙一
株式会社三祐コンサルタンツ 須藤 晃
東京農工大学大学院連合農学研究科 教授 加藤 亮
熊本県立熊本農業高等学校 畜産科 養豚部門 松本凌弥
JIIDからの報告
「カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム各国の水利組合間でのほ場内かんがい管理の開発と推進に関する優良事例の共有」に関する日・ASEAN統合資金プロジェクトの実施について
一般財団法人 日本水土総合研究所 主席研究員 山田潤一郎
TREND 農業農村開発に関する国際スケジュール
本誌は、一般財団法人日本水土総合研究所が定期的に発行しているものです。1994年(平成6年)からARDECとして発行してきましたが、初刊から30年近く経過したことから、第65号から「世界の農業農村開発」に名称を変更し、紙面をリニューアルしました。
本誌発行の目的は、食料確保や貧困削減、環境・生態系保全などとも密接に関係する世界の農業農村開発の現状や課題を広くお伝えすることです。このため、学識経験者、政府機関、国際機関、民間会社その他団体等の皆様から関連する自然科学・工学・人文社会学的な知識や経験について、ご寄稿いただいています。主に海外の農業や農村に関する調査研究や取組について分かりやすく紹介したいと考えています。
当研究所は、1978年(昭和53年)の設立以来、日本国内や海外において農業農村整備に関する政策や技術、知見についての調査研究や情報発信に取り組んでいます。英語名称は「The Japanese Institute of Irrigation and Drainage」です。略称は英語名称の各単語の頭文字をとってJIIDとしています。
当研究所の調査研究や情報発信においては、「産・官・学・民」のネットワークを活用し、その知見を融合することを特徴としています。「産」は民間企業、「官」は国や地方公共団体といった行政機関、「学」は大学・高校や試験研究機関、そして「民」は農業用水や農地を管理する団体である土地改良区や農業者など、幅広い関係者との連携を目指しています。
農業農村整備とは?
農業農村整備は、水田や畑といった圃場での農業生産の継続や改善を目的として、①取水堰、貯水池、ため池、用水路、排水路といった農業水利施設を建設したり、今ある水利施設を改良したりする灌漑排水の整備、②圃場の区画を大きくしたり、平らにしたり、土壌の物理化学的性質を改良したりする農地の整備、③大規模自然災害に備えて農業水利施設や農地を強化したり、災害が起こった場合に復旧したりする農村の防災減災対策などを行うものです。これは、国内外における食料の確保や飢餓の撲滅に加え、農業者の所得向上、農村の持続的発展、自然環境の保全等に貢献しています。
表紙写真
「気候変動の影響を受けたトウモロコシ畑(デンマーク)」