2024.2 FEBRUARY 69号
編集後記
日本の政府開発援助(ODA)予算は、振り返れば1989年に米国を抜いて世界一となりました。しかし、1997年度の1兆1,687億円をピークに減少に転じ、2023年度は5,709億円とほぼ半減し、支援額は主要援助国で米独に次ぐ3位となっています。
日本は長年、ODAを通じて開発途上国を支援し、国際社会での地位を高めてきたものの、厳しい財政事情もあり、従来のような支援は難しくなっています。さらに中国が広域経済圏構想「一帯一路」を通じて開発途上国に巨額のインフラ支援を進める等国際情勢が変化する中、日本はODAで培ってきた経験と実績をもとに限られた予算の中でも知恵を絞り、力を発揮できる質の高い支援を続けていく必要があります。
2023年6月、8年ぶりにODAの基本方針を定めた「開発協力大綱」が改定されたことを踏まえて、今号の特集テーマを「新たな開発協力大綱と農業農村開発協力」としました。
国際社会は気候変動やロシアによるウクライナ侵攻、新たな感染症など複合的な危機に直面していて、日本のODAが果たす役割はますます重要になっています。重点政策に挙げられている気候変動・保険・人道危機等に加え、デジタルや食料・エネルギー等経済強靭化において、日本の強みである確かな技術力や豊富な経験を生かし、相手国の要請を待たずに提案するオファー型の協力にも力を入れ、より戦略的に開発途上国のニーズにきめ細かく対応していくことが重要と考えられます。
日本は「人間の安全保障」を外交の主要な柱に据えており、これが世界の農業農村開発を通じて、持続可能な国際社会の実現につながっていくことを願わずにはいられません。
最後になりましたが、今号の発行にあたり、ご多忙の中、ご寄稿いただいたご執筆者の皆様にこの場をお借りしてあらためてお礼を申し上げますとともに、本誌を手に取っていただいた読者の皆様に感謝申し上げます。
※画像や文章はそれぞれの著作権者に属します。
企画委員会
委員長 角田 豊
委 員 石川善成 北田裕道 國安法夫 渡辺 守
編集委員会
委員長 石川善成
委 員 中 達雄 山田潤一郎
いずれの委員会も氏名は五十音順