ベトナムにおける
モデル圃場整備調査事業の実施


 

 経済発展に伴い、農村地域の労働力不足に直面している東南アジアでは、農業の機械化などを推進するための圃場(ほじょう整備への期待が高まっている。そのようななか、当研究所では、これまでミャンマー、カンボジア、タイ、ベトナムにおいて、相手国政府と連携してモデル的な圃場整備の実証調査事業を実施してきた。ミャンマーにおける実施地区では、整備後に機械化が進展するなどの効果も発現している。当研究所では更なる展開を図るため、現在、ベトナムとスリランカにおいて、モデル圃場整備への協力を行っている。ここでは、本年、ベトナムで実施するモデル圃場整備調査事業の概要について紹介する。

写真 フンイエンバック地区現況写真
写真 フンイエンバック地区現況写真
 当研究所では、平成29年度に東南アジア数か国における圃場整備の実施状況、実施に係る法体系、先方政府のモデル圃場整備への関心・協力体制、モデル圃場整備の波及効果などの調査を実施した。その結果、政府の関心が高く、協力体制が期待できるベトナムにおいて、モデル圃場整備調査事業を実施することとした。本事業では、ベトナム農業農村開発省に属する水利研究所(VAWR)と協力し、①圃場区画の拡大と農業の機械化促進を目的とした農地使用権の交換分合とモデル圃場整備の実施に加え、②水利法(2018年施行)の規定に準拠した水利組織の育成支援、および③圃場整備マニュアルの作成を行うこととしている。

 実施地区は、整備による効果の発現、事業への地元政府などの協力体制、他地域への波及効果などを考慮し、フングエン県フンイエンバックコミューン7a村とした。対象農地は7a村の水田15.46haで、受益農家数は97戸、現況圃場数は199枚である。本事業におけるモデル圃場整備では、現況の道路配置は変更せずに区画を設計するとともに、田越しによる移動・灌水(かんすいを解消するために、すべての区画に道路と水路が接するように計画した。また、対象農地には排水条件により二期作を行えない土地があることから、整備後に新たな農地使用権を設定する土地(いわゆる換地)の位置と面積の決定に当たっては、年間の延べ作付面積を踏まえて行うこととなった。工事は2020年11月に開始され、年内に完了する予定である。計画どおり工事が進み、圃場整備を契機とした農業の機械化や水管理組織の育成が進むことが期待される。

図 モデル圃場現況図(左)と計画平面図(右)
図 モデル圃場現況図(左)と計画平面図(右)

 なお、前号(62号)で紹介したスリランカにおけるモデル圃場整備調査事業の工事については、2020年4月から実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大の混乱を受け、来年以降に延期することになった。今後、ベトナムやスリランカでの実証成果を踏まえ、圃場整備実施に不可欠な、受益者による事業への合意形成手法や設計の考え方を、マニュアルとして整理していく予定である。

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