編集後記 代表的ともいえる国語辞典によれば、「遺産」とは「相続される財産」のことですが、「比喩的に前代の人が残した業績、たとえば文化遺産」とされています。1972年にユネスコで採択された世界遺産条約に基づく世界遺産は、人類にとっての「顕著な普遍的価値」を有するものです。幸いにほぼ毎週の日曜日の夕刻に、各遺産への現地取材がテレビ放映されています。地形や生態系、固有のランドスケープ、そして農業や漁業や商業の構造物遺跡、さらに衣装や楽器といった文化、宗教儀礼などを見ることができます。ただ、「かつては」という場合が多く、悠久の歴史に多少の寂寞感も伴います。 一方、世界農業遺産は「対象となる地域とそこに根付く共同体のシステムが、現在も発展している状態であること」が大前提となっています。しかも、「生産システムは全体として生態系と調和して、多様な作物間に共生的相互作用があって、豊かな生物多様性を実現していること」という、21世紀における世界的コンセンサスに適合しているものです。 また、世界かんがい施設遺産については、日本の当該遺産を網羅的に紹介した書籍の「はじめに」で、佐藤洋平先生が「インスタ映えのスポットも多数あります。いずれも現役で活躍しているので、ゴウゴウと音を立てる水流、水しぶき、そして訪れるタイミング次第では陽光に虹が浮かび上がります。しかし、水が足りず飢饉に怯える村人を何とか救いたいと、私財を投じた献身の偉人の生涯を学ぶこともできます」とのように述べておられます。 本号では、今に繋がる両遺産における地域振興の取組を各3例ずつ紹介いたしました。
いずれの委員会も氏名は五十音順 本誌は、一般財団法人日本水土総合研究所が農林水産省から受託している「平成31年度農業農村開発技術活用促進調査業務(国際交流・技術資料作成)」の国内技術検討委員会が収集した情報をもとに発行しております。 |