スリランカと圃場整備ワークショップを開催


 

 (一財)日本水土総合研究所は、2020年2月3日(月)から7日(金)にかけて、スリランカ農業省など職員ら10名の参加のもと、圃場(ほじょう整備のマニュアル作成に向けたワークショップおよび現地見学会を開催した。

 スリランカでは、東南アジア諸国と同様に、農村部の労働力不足が顕在化してきている。さらに、同国では相続による農地の分割により区画が細分化されているため、農業生産性や農業所得が低いことが課題となっており、農業機械の導入などを進めるための圃場整備の必要性が高まっている。そうしたなか、ミャンマーなどでモデル圃場整備の実績がある当研究所は、スリランカ農業省とモデル圃場整備調査事業に係る技術協力を行い、農家の合意形成の手法を含めた圃場整備マニュアルの作成を進めている。モデル圃場整備の技術協力を行うサイトは、アヌラーダプラ県にあるナッチャドワ貯水池の受益地26haであり、現在、区画配置などの設計がほぼ完成した。今回のワークショップは、区画変更に伴う農地の権利移転、設計などの考え方を日・スリランカの両国関係者間で整理し、今後のマニュアル作成に反映させることを目的に開催した。

写真1 調査事業地区現況
写真1 調査事業地区現況


 ワークショップは、2月3−4日の2日間にわたって行われ、スリランカ農業省灌漑管理局のチャンディカ部長ら政府職員9名に加え、調査事業の実施予定地区にあるイスル農民組合のニマル組合長が農家代表として参加した。ワークショップでは、日本側から圃場整備の歴史や効果、圃場整備の設計における留意点について説明するとともに、スリランカ側から、調査事業地区における農家調査の結果、農地の権利移転の手続き、圃場整備の設計について説明があった。調査事業地区では、農地の権利関係を一度全て白紙に戻し、区画整備後の形状に合わせて改めて土地権利証を発行するなど、通常とは別の手続きに基づき換地が行われることになっており、その手続きについて、とくに活発な議論が行われた。

 続く5−7日にかけて、日本の圃場整備の技術や6次産業化の取組を確認するため、山口県・愛媛県などを訪れ、南周防(すおう農地整備事業、道前平野農地整備事業などの現地見学を行った。参加者は、「①機械化施工」「②圃場の用排水構造物」「③レーザーレベリング」、および「④集落営農組織を構成員とするアグリ南すおう株式会社の生産費低減・労働力不足解消・後継者育成の活動」に強い関心を抱いたようであり、積極的に質問をしていた。

図1 圃場整備設計案
図1 圃場整備設計案

 なお、スリランカにおける調査事業については、スリランカ側が今春工事に着手し、年内の完成を目指している。同時に、調査事業を通じて得られた技術や経験を他地区に活用していくため、圃場整備マニュアルの作成も進めていくこととしている。当研究所では、同国における圃場整備が円滑に展開されるよう、引き続き技術協力を行っていく予定である。

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