ベトナムにおけるキャッサバの (一財)日本水土総合研究所(JIID)は、2018−19年度の2年間、ベトナム中部沿岸地域のクァンガイ省(東西経済回廊の東側玄関口ダナン市近郊)でキャッサバのフードバリューチェーン改善に係る調査(農林水産省受託業務)を行った。 キャッサバは、農家が生産したイモを仲買人などが地元の工場に搬入し、工場がデンプンを製造して移出・輸出し、国内外で食料品などの原料として消費されるというバリューチェーンになっている。現地調査では、①生産段階では、キャッサバイモの生産量・品質が不安定、労働力が不足、農地が分散錯圃の状況にあり機械化が困難、②加工・流通段階では、デンプンの製造量・品質が不安定、廃水が適正に処理されていないなどの課題が確認された。 本調査では、イモの生産量の安定がデンプンの製造量の安定に直結するとの観点から、とくに生産段階の課題に主眼を置いて、イモの単収の増大と作業効率の向上を図るためのモデル圃場整備(農地の集約化と道路・水路の整備)や営農改善実証(畝間灌漑・肥培管理の実践、植付機械化のデモンストレーション)、工場廃水の農地還元の検討などを行った。 モデル圃場整備は2集落、各5haで実施し、両側40−50mをカバーする用排兼用の土水路と全圃場に接続する耕作道路を矩形に配置し、分散錯圃となっていた農地を集約化した(戸当たり、平均的に2枚であったものを1枚に)(写真1)。2019年の栽培では早速、畝立作業が機械化され、作業委託経費が1/3に削減される結果が得られた。 写真1 農地の集約化(左:実施前、右:実施後)
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雨期の長期化による圃場整備工事の工期延伸によって、2019年のキャッサバ生育期間は前年に比して1−2か月ほど、短くなってしまったが、畝間灌漑・肥培管理の実践により単収は前年よりも増大(両集落とも20%以上増大)した。さらに2020年の栽培に当たり、日系農機メーカーの協力を得て、キャッサバ植付機のデモンストレーションを行った(写真2)。これによって、手作業に比して作業効率が飛躍的に向上することを確認できたことから、地元行政機関は2020年の収量を確認したうえで、2021年から同機械の利用促進を図るとしている。 JIIDと地元関係機関などとのセミナー(2019年12月3日開催)では、調査の成果や課題について情報共有・意見交換を行ったところであり、クァンガイ省の農業政策責任者は「2020年も、モデル圃場での営農改善実証を継続する」、「本モデルの周辺地域への普及拡大を図る」と表明した。モデル普及拡大に向けて、本調査の成果が活用されることが期待される。 |
写真2 キャッサバ植付機のデモンストレーション
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