コメのフードバリューチェーン調査 (一財)日本水土総合研究所(JIID) は、2018−19年度の2年間、農林水産省より本業務を受託し、タンザニアのモロゴロ州ムボメロ県ワミ・ルヒンド地区(以下、「本地区」)において、生産部門と流通・加工部門、それぞれのハード(灌漑整備・農地整備・アクセス道路・集出荷施設など)とソフト(灌漑用水管理・農産物の品質向上・流通体制など)を組み合わせた総合的な農業農村開発計画を策定することを目的に調査を実施した。 これまで日本は、同国において、長年にわたり水田の灌漑事業を中心に協力を行ってきたが、いまだに不十分な灌漑整備や低い営農技術により、コメの平均収量は1.5t/haと非常に低い水準に留まっている(アフリカ:平均2.5t/ha、アジア:平均4.4t/ha)。 本調査においては、地区内の用排水施設は未整備の部分が残るうえ、保管・精米施設、アクセス道路など、農家所得向上のために整備すべきインフラはいまだに多いことが判明した。それに伴い、①低い生産性、②収穫時および収穫後における大きなロス、③マーケティングの弱さなどの課題も確認された。 2020年1月14日(火)に開催された本調査の最終報告セミナーには、本地区の農家代表50名ならびにムボメロ県知事をはじめ、国家灌漑庁、農業省、モロゴロ州知事事務所などの関係機関、日本からは農林水産省、JIIDの計88名が参加した。 写真1 セミナーの参加者
セミナーでは、まず調査に協力したソコイネ農業大学のムブング博士から、本調査中に実施したワークショップなどのソフト対策を多くの農家が有益であったと認識しているとの調査結果が明らかにされた。続いて、JIIDから本地区に必要なインフラ開発計画および農家の能力開発計画を報告した。とくに能力開発では、①灌漑の有効活用のための水利組合の強化、②協同組合の設立による政府支援活用と価格交渉力強化、③営農向上のための技術・情報の共有、④マーケット情報への関心の維持が重要であり、農家の自助努力も含めて3C(Collaboration、Cooperation、Capacity building)を強化すべきであると報告した。報告後、参加者間で活発な質疑応答が行われ、タンザニア政府幹部や知事からは、本調査への謝意が重ねて表明されるとともに、組合の設立や管理運営などの各方面からの支援を惜しまないと発言されるなど、調査成果の実現に向けた力強い決意が述べられた。 |