東南アジア諸国局長クラスの参加による圃場整備ハイレベル会合の開催


 

 (一財)日本水土総合研究所は、令和元年7月22日に、タイ、ベトナム、ミャンマーの3か国を日本に招き、圃場(ほじょう整備ハイレベル会合を開催した。

 東南アジア諸国では、経済成長に伴う都市化の進展とともに、農村部の労働力不足が顕在化してきている。アジアの稲作地帯では、これまで、農地整備よりも灌漑(かんがい施設整備を優先して投資が行われてきたが、労働力不足対策として農業機械導入の前提となる圃場整備の必要性が高まってきている。そのような背景の下、日本水土総合研究所では、各国の圃場整備の更なる推進につなげることを目的に、東南アジアのなかでもすでに圃場整備の取組を開始している3か国を対象として、圃場整備ハイレベル会合を開催した。

 会合には、ミャンマー天然資源環境省のキン・マウン・イー次官、農業畜産灌漑省灌漑局のチョウ・ミン・ライ局長、農業機械化局のソー・ライ局長などの高官に加え、タイ農業協同組合省農地改革局のダラニー・チャナチョン調査研究部長やベトナム農業農村開発省水資源研究所PIMセンターのトラン・チー・トルン所長が参加した。このほか、タイからは農業協同組合省王立灌漑局が、ベトナムからは農業農村開発省水資源総局および天然資源環境省土地管理総局が参加し、3か国からの参加者は合計で14名となった。

写真1 圃場整備ハイレベル会合の出席者
写真1 圃場整備ハイレベル会合の出席者

 会合では、圃場整備や農地改革に関する各国の法制度、実施状況、合意形成手法、課題・対策などについて、情報の交換・共有を行った。会合に参加した各国の社会・経済情勢、圃場整備の法体系の整備状況などはさまざまであるものの、農業機械化や水利用の効率化のために、圃場整備を推進することの重要性は強く認識されており、さらなる推進に向け、政府の役割の明確化、標準設計や合意形成の実施システムの確立、事業効果のPRなどが課題として挙げられた。

写真2 圃場整備ハイレベル会合で発言するミャンマー農業畜産灌漑省ソー・ライ農業機械化局長
写真2 圃場整備ハイレベル会合で発言するミャンマー農業畜産灌漑省ソー・ライ農業機械化局長

 翌23日および24日には、日本の圃場整備の実施手法や実施状況について、現地で確認するとともに、県や市の事業担当者、土地改良区や換地委員と意見交換を行うことを目的に、埼玉県および茨城県を訪問した。埼玉県では、発戸地区および鴻巣・行田地区を訪問し、一般的な圃場整備に加え、埼玉型と呼ばれる簡易的な圃場整備の実施地区を訪問した。また、茨城県では、水源から受益地までの一体的な整備の状況が理解できるよう、農林水産省那珂川沿岸農業水利事業所の御前山ダムおよび茨城中部農地整備事業の圃場整備実施地区を訪問した。

 高齢化が著しい日本とは状況が異なるものの、農村部における労働力の減少はどの参加国でも深刻であり、圃場整備の推進が望まれている。当研究所では、アジア諸国の圃場整備に係る課題と対策などについて調査を進めるとともに、今後も各国とのセミナーを開催して、圃場整備に係る知見を共有することによって、各国における圃場整備の推進を後押ししていきたいと考えている。

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