2) 2005年にNGO・ActionAidが、グローバル食品企業の力が強大になり、途上国の貧困との闘いを阻害しているという報告書を発表した。これらの企業は農村社会から富を吸い上げ、小規模農業を疎外し、人々の権利を侵害している。農産物市場を貧しい人々に利益をもたらすように改善し、これらの企業に人権・環境責任を負わせるための緊急な行動が必要だと提言した(農業情報研究所、2005)。具体的には、たとえば概略的に次のように記述されている。「一握りの多国籍企業が種子からスーパー店頭までの食品・農産品供給チェーンを支配するようになった。トップ30の食品小売企業が世界の食品雑貨3分の1を売り上げ、ペルーの生乳生産の80%をたった1つの多国籍企業が、世界の穀物貿易の90%を5企業が、世界の農薬市場の4分の3を6企業が支配している。2企業が世界のバナナの半分を販売、3企業が世界の茶の85%を貿易している(中略)これらの企業が、①市場支配力を行使して、農民の生産物価格を押し下げ、農業資材価格を引き上げ、貧しいコミュニティから富を吸い上げている、②市場支配力によって押し下げた農家価格と小売価格のギャップを拡大し、その分を消費者に還元せず自社の利益にしている、③農民が満たすことのできない厳しい基準を課すことで、数億もの小土地保有者の生計を脅かし、貧しい農民と農村労働者を締め出している」。さらに、それに対する処方箋として、「農産食品市場での多国籍企業の市場支配力の乱用の防止、農村生産者組織の強化と設立、小規模農業コミュニティに影響を与える世界的農産商品危機への対応(筆者注:たとえば、1990年代終りから2000年代初めにかけてのコーヒー危機に代表される国際価格暴落への対処)、そして、多国籍企業に人権と環境への影響に対する法的責任を負わせること(途上国における多国籍企業の活動を規制する国内法の導入)」などを提案している。
 なお、NGO・ActionAidのこうした分析は以下にて詳細が読める。
THE WORLD BANK AND AGRICULTURE ; A CRITICAL REVIEW OF THE WORLD BANK’S WORLD DEVELOPMENT REPORT 2008:
http://rajpatel.org/wp-content/uploads/2009/11/actionaid.pdf