編集後記 本誌ARDECが創刊されたのは1994年、和暦で平成6年でした。当時の状況を振り返りますと、この前年はたいへんな冷夏にみまわれました。平均気温は戦後2番目という低さで、7月から8月にかけては平年よりも2℃ほど低温でした。また、長雨も続いて、稲作は大打撃を受け、とくに「やませ」と呼ばれる冷たく湿気の多い偏東風の影響によって、青森・岩手・宮城では作況指数が40にも届かず、東北全体でも60を下回りました。「コメ不足」となり、タイ・中国・アメリカなどからコメを緊急輸入しています。そして、94年はアメリカ産リンゴの輸入が解禁になった年でした。 日本農業は冷夏という自然環境の影響、および自由貿易を推進するという国際経済の影響を受けました。創刊当時の本誌関係者の話によれば、「日本農業を取り巻く内外の環境」を意識した編集方針であったようです。その「環境」は、自然から社会経済までの広範なものを想定したそうです。今号では、創刊以来の主要テーマを振り返っていますが、やはり「環境」は一つのキーワードであったようです。 一方、創刊時代にはなかったといっても過言でないのが、近年、注目されている「レジリエンス」という概念です。「環境の激変」に対応できる能力を準備しておくという「レジリエンス思考」は、いっそう重要性を増していくことでしょう。その思考過程では「画期的な新技術」を理解して、これを十分に活用することが必須の要件になるようです。 国際社会が望ましい世界の実現に向けて設定した「SDGs」、あるいは「気候変動の緩和・適応」といった事柄も視野に入れた情報誌の役割を果たせるように、今後もいっそうの努力をしてまいります。
いずれの委員会も氏名は五十音順 本誌は、一般財団法人日本水土総合研究所が農林水産省から受託している「平成30年度農業農村開発技術活用促進調査業務(国際交流・技術資料作成)」の国内技術検討委員会が収集した情報をもとに発行しております。 |