UNESCO は、2008年に国土交通省水資源部からIWRMガイドラインの作成を委託され、各国の専門家からなる運営委員会を設置して検討を進めた。筆者は、(独)水資源機構副理事長の立場で、この委員会の共同委員長として作業を主導した。
まず、基本方針として、流量変化の大きい我が国の河川での経験が活かされ評価を受けることや、水利調整に当たり灌漑などの調整される側の視点を重視することなどを定めた。そのうえで、流域の発展段階に応じて対策を進めるという、らせん型の成長モデルの概念を導入するとともに、事例の奥に潜む解決へのカギを掘下げてわかり易く提示するなど、従来のガイドラインにない独自性を持たせるよう工夫した。
ガイドラインは、2009年3月にトルコのイスタンブールで開かれた第5回世界水フォーラムの場で、当時、UNESCO事務局長であった松浦晃一郎氏から、国連の「水と衛生に関する諮問委員会」の名誉総裁を務めておられた皇太子徳仁親王殿下に贈呈する形で公表された。