トピック2[アジア・モンスーンの灌漑開発の特徴]
東南アジアの灌漑開発は、まずは雨期作の安定、すなわち我が国と同じく補給灌漑として進められた。たとえば、灌漑施設の整備が不十分な東北タイの農家は、華僑の商人から収穫物と引き換えに種もみや肥料を手に入れ、雨期の到来を待って田植えを行う。ところが、最初の降雨から次の降雨まで、ときには1か月もの日照りが続き、折角の苗が全滅して収穫皆無という例も珍しくないと聞く。東北タイから、若い女性たちがバンコクに出稼ぎに出る理由の一端がここにある。
灌漑施設は、ときならぬ日照りにも耐えて収穫を保証する「保険」としての機能を果たしている。乾期の灌漑は、絶対的に不足する水源さえ確保できれば、雨期のために整備された施設を活かして、収穫の倍増を保証するものとなる。