編集後記 「水」という物体は天からは雨、あるいは霰や雪などとして、地上にもたらされます。それは草木の葉を濡らし、あるいは地中に浸透して地下水となり、あるいは小さな流れとなります。もちろん、蒸発もします。水資源としてみれば、大気からの降水、陸上から海洋への流出、そして大気への蒸発という大きな循環になります。その循環も実際の動態としては、空間的・時間的に、つまり「どこに」「いつ」「どれだけの量が」として捉えれば、人々の生活に大きな関わりがあります。 人類は、そうした水の動態を巧みに利用して、作物を栽培するようになり、やがて溜め池のような人工物によって、少しずつ制御するようになっていきました。灌漑技術は中東では紀元前の数百年という昔から、高度な水準に達し、その生産物を支配する王朝は広大な領域を支配します。しかし、塩類集積の仕組みが十分に理解されていなくて、現在でいえば環境的制約を超えて、灌漑を拡大・継続して、その生産物の一段の増産を奨励、あるいは奴隷すら投入しました。こうした生産物に強く依存していた権力体制は極めて脆弱で、塩害による収量の激減を大きな要因として消滅すらしてしまいます。 翻って、アジアのモンスーン気候にあっては、水田による稲作という栽培体系によって、比較的に安定した農業生産を営々と継続してきました。もちろん、日本でも各地に大干ばつと雨ごいの伝説があります。干ばつにくわえて、歴史に残るような冷害や洪水も、度々、農村を襲っています。 近年の産業構造の激変のなかで、第一次産業が軽んじられる傾向が、ややもすると強まっていますが、人間は「水」がなければ死んでしまいますし、「食べ物」がなければ生きていけません。代替物のない「水」と「食べ物」の確保という、いわば人類文明存続の大前提について「学ぶ」、そのいくつかの手がかりをKey Noteと致しました。
いずれの委員会も氏名は五十音順 本誌は、一般財団法人日本水土総合研究所が農林水産省から受託している「平成30年度農業農村開発技術活用促進調査業務(国際交流・技術資料作成)」の国内技術検討委員会が収集した情報をもとに発行しております。 |