ベトナム天然資源・環境省土地総局が
(一財)日本水土総合研究所と技術交流


 

 一般財団法人 日本水土総合研究所(JIID) 主任研究員 花田潤也


 2018年5月、ベトナム天然資源・環境省土地総局のアイン土地政策法制局長他8名が来日し、(一財)日本水土総合研究所(以下、JIID)と技術交流を行った。

 同国の経済発展は著しく、2002〜12年までの10年間で1人当たりGDPが4.8倍(345→1641ドル)に増加したが、農村の労働力が都市部へ移動(対総人口比の農村人口:75%→69%)しており、農業機械化による労働生産性の向上が政策課題となっている。一方、農業機械化に重要な役割を果たす圃場灌漑(かんがい整備事業については、2004年ころから地方政府の事業として推進されている状況であり、国策として圃場整備事業を推進する体制は確立されていない。

 このような背景から、ベトナム政府において土地の登記および管理を所管している土地総局が「社会経済開発に向けた土地潜在力を活用するための圃場整備事業促進政策の調査・評価・策定」というプロジェクトの一貫として来日し、JIIDとともに技術交流セミナーや現地調査を行った。

 具体的には、5月8日、都内会議室で「圃場整備事業」をテーマとしたセミナーを開催した。JIIDからは、「日本の圃場整備事業の歴史・概要」、「東南アジア地域におけるJIIDのモデル圃場整備事業」について紹介した。土地総局からは、「ベトナムにおける農業開発のための土地集積の課題と今後の方向性」、「ベトナムにおける土地管理」について説明があった。

写真1 圃場整備事業をテーマとしたセミナーの主要開催者
写真1 圃場整備事業をテーマとしたセミナーの主要開催者

 また、5月10日、千葉県および関係土地改良区の多大なご支援の下で、同県匝瑳(そうさ市および東金(とうがね市を訪問し、県の担当者や地元の農業法人の代表などから、圃場整備を契機として設立した農業法人の営農状況やライスセンターの運営、地下灌漑(かんがいシステム、国営両総地区の揚水機場、干潟干拓の歴史などについて説明を受け、意見交換を行った。土地総局からは、地下灌漑システムにおける地下水位制御の構造や、海岸線に近い圃場における用水および地下水の塩水化の状況について関心が示された。

 JIIDは、東南アジア諸国において圃場整備事業を展開するための調査として、農地の権利に関する法制度の現状把握、利害関係者の合意形成手法、権利移動の制約に応じた整備手法の検討などを行っているところであり、このような技術交流がベトナムにおける圃場整備事業の制度構築に反映されることが期待される。

写真2 千葉県匝瑳市での圃場視察
写真2 千葉県匝瑳市での圃場視察

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