タイ農業・協同組合省農地改革局が
(一財)日本水土総合研究所と技術交流

 一般財団法人 日本水土総合研究所(JIID) 主任研究員 花田潤也


 2018年6月、タイ農業・協同組合省農地改革局のソンポン次長他が来日し、(一財)日本水土総合研究所(The Japanese Institute of Irrigation and Drainage:以下、JIID)と技術交流を行った。この訪日は、我が国の政府開発援助によるものではなく、同局自前の予算によるものである。

 同国は、大幅な経済成長を遂げてきた一方で、不公平な土地所有(1割の富裕者が8割の土地を所有)の下での投資目的の土地所有や土地なし農家の貧困、農業者の高齢化による耕作放棄などが政策課題となっている。農地改革局は、民間から買い上げた土地や国有地を土地なし農家に配分する役割を担っており、営農の効率性・持続性を確保するために農業インフラの整備を行って、農業者の育成を進めたいとしている。
 このような背景の下、ソンポン次長らは我が国の中山間地域振興施策を調査することを目的として来日し、JIIDとともに技術交流セミナーや現地調査を行った。

 具体的には、6月13日、JIIDの会議室において「高齢化、土地および労働力に関する課題」をテーマとしたセミナーを開催し、相互に自国の現状や施策を紹介し意見交換を行った。JIIDからは「高齢化の影響緩和に資する農業農村政策」、「圃場(ほじょう整備」、「多面的機能維持支払」について紹介した。それに対し農地改革局から、戦後の日本の農地改革、現行の農地制度、圃場整備における受益農業者の義務、日本型直接支払制度や青年就農給付金の要件など幅広く質問があり、JIIDの齋藤晴美理事長から、それぞれの制度・施策の背景を含めて、戦後から現代に至る農政の展開について説明した。

写真1 技術交流セミナーの主要開催者
写真1 技術交流セミナーの主要開催者

 また、6月14〜15日にかけては、新潟県および上越市の多大なご支援の下で、新潟県上越市を訪問し、県の担当者や地元の農業法人の代表などから、圃場整備、農業法人への農地集積、標高差を活かした農業経営、直売の取組、都市農村交流、日本型直接支払の活用などについて説明を受け、意見交換を行った。農地改革局からは、山間地ならではの条件を活かした農業経営や等高線に沿った圃場整備などについて強い関心が示された。

 農地改革局とJIIDの技術交流は、2017年5月にスリヨン局長(当時)が来日したのに続いて今回が二度目であり、同局はこの技術交流を継続したいとの意向であった。このため、タイ政府は、7月25日に日タイ経済連携協定(EPA:Agreement between Japan and the Kingdom of Thailand for an Economic Partnership)第13章(協力章)に基づき開催された「農業、林業および漁業に関する小委員会」において、農地改革局の施策に係るJIIDとの連携を、両国協力のテーマの一つとして位置づけたところである。

 今後は、同局所管の個別案件において、基盤整備の計画・設計をJIIDの協力の下でモデル的に実施することとしており、これを参考として同局の施策全般に我が国の経験・知見が活かされていくことが期待される。

写真2 新潟県上越市での圃場視察
写真2 新潟県上越市での圃場視察

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