8か国の参加を得て 経済発展が著しい東南アジア諸国では、高度経済成長に伴う都市化とともに、農村部における労働力不足が顕在化し、圃場整備および農業の機械化へのニーズが大きくなっている。このような背景から、一般財団法人日本水土総合研究所(JIID:The Japanese Institute of Irrigation and Drainage 以下、当研究所という)は、2018年1月16日〜19日に末端圃場レベル整備に係る国際セミナーを開催し、アジアモンスーン地域の8か国(カンボジア、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、スリランカ、タイ、ベトナム)から、合計15名の専門技術者を招聘した。このような圃場整備や末端圃場レベルの水路および道路の整備に係る国際セミナーを、大々的にわが国で開催するのは初めてのことである。 写真1 セミナー集合写真
1日目の冒頭、当研究所の齋藤晴美理事長より、「アジアでは急激な経済成長に伴う農村から都市への人口流出により、農業労働力確保が困難になります。このため、農業機械の導入と普及を図り、末端圃場レベルでの道路・水路や農地の整備を進める必要があります。本日は、持続的な水田稲作に関する技術協力の一環として、農地制度や圃場整備の現状などについて情報を交換し、圃場整備の課題や今後の展開方向について活発な意見交換を行いたい」と述べた。 セミナー発表では、各国の末端圃場レベルの整備にかかる状況(農地、灌漑、経済、土地制度、農地整備関連法、農家合意形成など)、課題・制約要因および将来の展開方向について発表が行われ、活発に意見が交換された(表1)。 表1 主要な発表内容(抜粋)
2日目は当研究所の橋本晃主席研究員より「日本の圃場整備事業の概要と政策的方向性」と題した発表を行い、「戦後は農業の経営規模拡大および機械化などによる農業構造の改善を目的としたが、現在はコメ需要の縮減、農家の減少・高齢化、農地面積縮減などに対応した農業競争力強化を目的に圃場整備を実施している」ことを説明し、くわえて地方自治体や土地改良区による簡易な圃場整備などに関しても紹介をした。 その後、2グループに分かれてワークショップ形式で「テーマ1:農村の労働状況と農業の機械化状況」、「テーマ2:末端圃場レベル整備に係る政府の方向性」の2テーマに関する意見交換を行った。 まず、当研究所よりワークショップの進め方を説明した後、付箋と模造紙を用いて各テーマ30分間のブレインストーミングによる意見出しを行った。つづいて、参加者から発表者を選出して、各テーマに関する各国の状況、共通点などの即座のプレゼンテーションが行われ、活発な意見交換がなされた。 写真2 ワークショップの開催
2日目の午後からは、現地視察として、岡山県下の圃場整備事業などを視察した。岡山県農林水産部耕地課により、ご案内をいただき、実施中の圃場整備事業視察、ため池・児島湾締切堤防などの視察、圃場整備完了地区農家との意見交換を行い、さらに中国四国農政局に坂井康宏局長を表敬訪問した。 参加者へのアンケート調査では、セミナーに関して、「特に興味深い」または「興味深い」との回答が合わせて100%、「新しい発見があった」は87%という結果であった。また、ブレインストーミングに関しても尋ねたところ、「特に興味深い」または「興味深い」との回答が合わせて87%であった。 以上に報告するように、本セミナーは研修生の参加意欲が高く、たいへんに好評のうちに終了した。 |