地球規模の農業と食料システムの改善に向けて
─ CGIARの挑戦 ─

CGIAR事務局 専門官 村中 聡

1.はじめに

 これまで地球規模の課題である貧困や食料問題に対し、国連ミレニアム開発目標(MDGs)などを始めとする取組によって、一定の成果が得られてきたが、依然として、およそ10億人が貧困に苦しみ、8億人が食料・栄養不足の状況に置かれている(FAO et al., 2015)。計算上では世界人口を賄えるはずの食料だが、世界の肥満人口は7億人を超え(GBD 2015 Obesity Collaborators, 2017)、生産された食料の3分の1、年間13億トンが廃棄される(FAO, 2011)など、 その配分が十分に機能しているとはいえない。また、これまでの長年の耕作や化学肥料の使用による土壌の劣化、世界的な気候の不安定化など、食料生産に関わる不安定要素は山積している。現在75億人とされる世界人口は、2050年に98億人、2100年には112億人に達すると予測され(United Nations, 2017)、この急激な人口増加に対応するための食料供給システムの確保は私たちの緊急の課題となっている。

 農業研究の成果は、農業開発、そして食料供給システム確保の基盤として、世界各地の農業生産性向上に大きく寄与してきた(Thirtle, 2003)。その中心となってきたのが世界規模の農業研究ネットワークであるCGIARであり、そのインパクトはこれまでの投資額の17倍に相当すると算出されている(Renkow, 2010)。そして、今後、このCGIARの活動とネットワークは、農業研究で得られた成果を、その技術を必要とする小規模農家に届けるために、ますます重要になると期待されている(Nature Plants, 2017)。

 現在、CGIARとその傘下の15の国際農業研究センター(以後、CGIARセンター) には、1万人を超えるスタッフが在籍し、3000を超える研究パートナーとともに、70以上の国々で活動を実施している(図1)。 本稿では、このCGIARの戦略や体制、そして最近の活動を紹介するとともに、日本の農業研究・開発機関との連携強化の可能性について考察する。

図1 CGIARセンター本部とその活動拠点
図1 CGIARセンター本部とその活動拠点
注: 諸国際農業研究センターの名称と本部所在地
AfricaRice:アフリカ稲センター コートジボワール ブワケ/Bioversity International:国際生物多様性センター イタリア マッカレーゼ/CIFOR(Center for International Forestry Research):国際林業研究センター インドネシア ボゴール/ICARDA(International Center for Agricultural Research in the Dry Areas):国際乾燥地農業研究センター レバノン ベイルート/CIAT(International Center for Tropical Agriculture):国際熱帯農業センター コロンビア カリ/ICRISAT(International Crops Research Institute for the Semi-Arid Tropics):国際半乾燥熱帯作物研究所 インド ハイデラバード/IFPRI(International Food Policy Research Institute):国際食料政策研究所 アメリカ ワシントン/IITA(International Institute of Tropical Agriculture):国際熱帯農業研究所 ナイジェリア イバダン/ILRI(International Livestock Research Institute):国際畜産研究所 ケニア ナイロビ/CIMMYT(International Maize and Wheat Improvement Center):国際トウモロコシ・コムギ改良センター メキシコ エルバタン/CIP(International Potato Center):国際バレイショセンター ペルー リマ/IRRI(International Rice Research Institute):国際稲研究所 フィリピン ロスバニョス/IWMI(International Water Management Institute):国際水管理研究所 スリランカ コロンボ/World Agroforestry Centre:国際アグロフォレストリー研究センター(旧ICRAF) ケニア ナイロビ/WorldFish:国際海産資源管理センター マレーシア ペナン
出所: 図は筆者作成。英字機関名およびHEADQUARTERS所在地は http://www.cgiar.org/about-us/research-centers/ より、日本語機関名は http://www.affrc.maff.go.jp/kokusaikenkyu/vacancies.htm などより。

2.CGIARの成立と変遷

 CGIARは、1971年にアメリカやイギリスなどの先進国(日本は翌72年から参画)、地域開発銀行、およびロックフェラー財団など、発展途上国の農業研究支援に実績を有する民間財団などが参加する協議体として発足した。当時、コムギやイネの新品種の開発と化学肥料や灌漑(かんがいなどの組み合わせによる大幅な生産性の向上が達成され、 食料問題解決に寄与する農業研究のポテンシャルが明確に示されたことを背景とし、CGIAR設立の目的は、「農業研究への長期的かつ組織的な支援によって、とくに発展途上国の人々の生活の向上を図る」とされた。その目的は発足以来変わらず、出資者による支援をベースに各CGIARセンターが個々の組織として独立しながら、CGIAR総体としては戦略的目的を共有するグループとして、半世紀以上にわたり世界の農業の改善に貢献し続けている。

 一方で、CGIARの体制は、世界の市場や政治の変遷を受けながら大きく変化してきた。発足当時は、実際の研究活動を担当する4つのCGIARセンター(CIMMYT、IRRI、CIAT、IITA)と、その活動に対する18の出資者によるネットワークであったが、 その後、 研究分野の多様化と組織・予算規模拡大を受け、CGIARセンター数が増加し、多様な分野での成果を上げてきた(Multi-disciplinary期およびExpansion期)。しかし、1990年代後半から各国の農業研究・開発機関による途上国農業支援への参入が盛んになるにつれ、これらの各国機関との連携がCGIARに強く求められるようになると、CGIARチャレンジプログラムの設立などを始めとする連携強化の動きが始まる(Rethink期)。その後、さらにCGIARセンター間の連携を強化するための体制改革(Reform)を経て、2016年に現在のCGIARシステム(CGIAR System Framework)が成立している。


3.CGIARシステムとPortfolio 2017−2022

 この新たなCGIARシステムでは、2017〜22年の研究体制(Portfolio 2017−2022)として 11の CGIAR研究プログラム(CRP:CGIAR Research Program)とそれをサポートする3つのプラットフォームが設定され、17年1月から活動を開始している(図2)。CRPは、各センターおよびパートナーの連携を強化するために設立された横断的なプログラムであり、2010〜16年のCRP(第一期)と比べて、2017〜22年のCRP(第二期)には2つの大きな特徴がみられる。

図2 CGIAR Portfolio 2017-2022
図2 CGIAR Portfolio 2017-2022

 一つ目はCRPが、農業・食料システム(AFS :Agri-food System)CRPと地球規模連携(GI :Global Integrating)CRPに整理されたことである。とくにAFS CRPでは、これまでの研究対象や農業体系による分類を改め、主要作物や家畜・魚類のそれぞれが重要な役割を果たす農業体系や地形・自然環境、バリューチェーンなどを包括した「農業・食料システム」を研究対象とするようにデザインされている。これは、1つのCRP内で基礎研究から技術開発、そして普及・農村開発活動までを一体化させることで、インパクトのある成果を実現させることを意図したものである。2017年から活動を開始したAFS CRPは7つ (FISH、FTA、LIVESTOCK、MAIZE、RICE、RTB、WHEAT)、そして新たに乾燥・半乾燥地の農業生態系に着目したGLDCが18年から実施予定である。

 一方、4つのGI CRPは、作物や地域を超えた「栄養と健康」(A4NH*)、「気候変動」(CCAFS)、「政策」(PIM)、「天然資源とエコシステム」(WLE)といった地球規模の課題に対し、各AFS CRPと連携しながら対応するための枠組みである。そして、遺伝資源の維持・管理・利用(GENEBANK)、先進的な育種技術の利用(EiB)、多様な情報を利用したビッグデータ解析の利用(BIG DATA)という基盤部分について、3つのプラットフォームがCRPの活動をサポートする体制となっている。

 二つ目は、これまでと比べて、さらにパートナー機関との連携が強化された点が挙げられる。Portfolio 2017−2022では、オランダ、フランス、ドイツ、日本などの各国の大学や研究・開発機関に加え、国際機関や国際・地域ネットワークが戦略パートナーとして参画している。これらの戦略パートナー機関は、CGIARセンターと連携して研究・開発活動を行うだけでなく、各CRPの計画や運営管理にも参画し、幾つかのCRPではパートナー機関が旗艦プロジェクト(Flagship Project)の取りまとめを担当するなど、これまでよりも深いレベルでの連携が実現している。 これらの変化は、CGIARの有する 「世界規模の農業研究ネットワーク」、「農業研究の成果を必要とする小規模農家に届ける」という役割をさらに強化するものとなっている。


4.CGIARの活動と研究のトレンド

 CGIARの活動は、基礎研究分野から育種、技術・品種普及や政策に至るまで多岐にわたっているため、ここではCRPに横断的にみられる研究のトレンドについて記すとともに、CGIARの特徴である複数分野が連携し、広い地域にわたって成果を上げつつある研究事例を紹介する。

(1)栄養と健康増進への取組の増加

 CGIARのPortfolio 2017−2022では、「栄養と健康増進」への取組が、この課題に着目するA4NH だけでなく、他のCRPでも重要な視点として大きく取り上げられている。各CRPによる取組は、a)MAIZE(ビタミンA)、RTB(ビタミンA)、RICE (鉄、亜鉛)を始めとする作物の栄養強化(Biofortification)に着目したもの、b)FISHやLIVESTOCK(動物性たんぱく質)、FTA(未利用の森林作物資源)、GLDC(マメ類)など、栄養価の高い作物・食品の活用に着目したもの、c)A4NHを中心とした農業システムの多様化、食の教育や政策への働きかけを行うものに大きく分類ができる。このような動きは、近年の「食料安全保障にはエネルギー確保だけではなく、栄養改善の取組が欠かせない」という認識の高まりを受けたものであるが、AFS CRPが包括的に農業・食料システムを研究対象とするように整理されたことで、各AFS CRP内での栄養・健康に関わる多様な活動の連携が強まったことも、これらの取組が前面に出てくる一因となっている。

 この栄養改善の点では、 CGIARセンターの1つであるCIPとHarvest Plusプロジェクトが中心となって進めたオレンジ・サツマイモ(OFSP: Orange-Fleshed Sweet Potato )への取組が、アフリカのビタミンA不足の解決に大きく貢献したとされ、2016年にWorld Food Prizeを受賞している。この活動は、ビタミンAの前駆体であるβ-カロテンを豊富に含み、果肉がオレンジ色をしたサツマイモ品種の開発が契機となっている。しかし、このサツマイモの新品種の普及には、アフリカの生産者・消費者の「果皮や果肉が白く、甘くない品種への強い嗜好(しこう性」という壁を乗り越える必要があり、当初、普及は困難ではないかと考えられていた。

 このような難局に対し、a)多様な遺伝資源の利用、b)高いβ-カロテン含有量と優れた生産性・栽培特性を兼ね備える品種の育成、c)新品種の特性に合わせた簡易な栽培管理技術の開発、d)育種・普及パートナー機関の強化、e)種苗生産の商業化による普及規模の拡大、f)栄養教育への取組、g)ブランド化や調理法・加工製品の提案、h)各国・地域の政策への働きかけ、などの多岐にわたる活動が連携した結果、1日125gの摂取によってビタミンA不足を解消できることが実証され(Kurabachew, 2015)、2020年までに、現在の300万世帯から1000万世帯への普及拡大活動が続けられている。

 このサツマイモの例を含むCGIARによる栄養改善への取組は、「栄養への取組拡充:行動枠組み(SUN:Scaling up Nutrition: A Framework for Action)」などの国際的イニシアティブからもマルチセクトラル・アプローチの成功例として評価され、オレンジ・サツマイモの活動は、CGIARの有する多様な分野の研究者とその研究ネットワークの連携がインパクトにつながった代表例となっている。

(2)パブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP:Public-Private Partnership)の促進

 CGIARでも近年、 民間企業の持つ機能を有効に技術開発や普及強化に結び付けるため、PPPに向けた取組が盛んになっている。これまでも種子会社などの民間企業を、CGIARが開発に関わった優良品種や技術の普及に利用することは盛んに行われていたが、さらに多様な形でのPPPが展開されるようになっている。

 民間企業とのパートナーシップを普及に利用する取組の一例として、IITAとA4NHが中心となって進めているAflaSafeTM普及への取組を取り上げる。アフラトキシンは、トウモロコシや落花生などの作物に付着したAspergillus flavusなどのカビによって生産される毒性の強い物質であり、肝臓ガンの原因になるなど、汚染された穀物を消費する人々や家畜の健康に大きな被害をもたらしている。AflaSafeTMはこのようなアフラトキシンの問題に対して、IITAとUSDA-ARS(アメリカ農務省農業研究局:United States Department of Agriculture - Agricultural Research Service)などが共同開発したアフラトキシンを生成しないAspergillus属のカビを人工的に接種することによって、アフラトキシンの生成を抑えるという技術を商品化したものである。現在、AflaSafeTMは標準的な施与(10kg/ha)を行うことで、アフラトキシンによる汚染を90%以上軽減でき、これによって販売価格が13〜17%上昇することによって、18倍以上の費用対効果が得られることが実証されている。

 ナイジェリアではすでにIITAによる商業販売が行われているが、さらにアフリカ各国でAflaSafeTMの大規模普及を促進するため、民間企業によるライセンス生産・販売が計画され、準備が進められている。しかし、アフリカ各国での民間企業参入はハードルが高く、通常は民間企業が実施する部分についても、IITAを中心とする研究機関が分担する形としなければならない。AflaSafeTMに関しては、a)各国土着のAspergillus属のカビを利用した各国向けの製品の開発、b)各国での政策への働きかけと製品登録、c)モデル生産工場の設立とビジネスモデル実証試験の実施、などが研究課題(Researchable issue)として取り組まれ、アフリカ10か国での販売開始に向け精力的な活動が進められている。研究機関が普及活動にどこまで踏み込むかという点について議論は尽きないが、CGIARでは開発された新たな技術の普及・利用を持続的に進めるため、民間企業や開発機関とのパートナーシップを積極的に取り入れている 。

 一方、普及部分だけではなく、CGIARが有するリソースを民間企業と連携した品種・技術開発に利用する試みも進められている。ICRISATのハイブリッド・ソルガム/ミレットやIRRIのハイブリッド・イネについて民間企業を含むコンソーシアムが設立されていることはその好例であるが、DuPont PioneerとCIMMYTが連携して先進的な育種技術であるCRISPR-Cas(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats / CRISPR Associated Proteins)を利用した途上国向けの育種を開始した例など、企業の持つ先進的な技術を積極的に研究・育種に取り込むという動きも盛んになっている。

 また、これらのPPPの動きに対応し、IITAの「ビジネス育成プラットフォーム(BIP:Business Incubation Platform)」など、 各CGIARセンターでは民間企業との連携を積極的に支援するための枠組みが設立されはじめ、PPPへの取組はさまざまなレベルで、いっそう進むと考える。しかし、その一方で、公的機関であるCGIARがその成果を地球規模の公共財(Global Public Goods)とするのに対し、投資の回収を求める民間企業との間では、知的資産・財産(Intellectual Assets/Properties)の捉え方について、今後、十分な整理と制度の確立が必要になると指摘されている(Lawson and Sanderson, 2016)。

(3)ジェンダーの視点(Gender lens)の導入

 とくに途上国では、女性が農業生産に大きな役割を果たしているにもかかわらず、男性よりも低い地位に置かれ、研究・開発の過程でも農民としての女性は「見えない存在」となっていた。一方で、女性が農業や食料確保に大きな役割を果たしていることから、 貧困の削減や食料の確保を目標とした研究・開発活動においては、ジェンダー間の平等と女性の社会・経済的貢献を考慮することが不可欠となっている。この取組は、女性の生活環境改善や地位向上に直接的に貢献する活動だけではなく、研究・開発の各分野・段階、そして職場環境などの面で、常にジェンダーの視点をもつことが求められるようになっている(ジェンダー・メイン・ストリーミング)。

 たとえば、育種戦略の設定や実際の選抜段階において、女性農家や消費者からのフィードバックを受け、作業性の高い品種や、食味や調理特性に優れ、市場嗜好性に適合した品種の育成を図ることで、品種普及に良い効果が期待できる。そして、このようなジェンダーへの取組が、農業技術の普及・利用に対してどのように影響・貢献するかを評価するためのCRP横断型のイニシアティブとしてGENNOVATE(Enabling Gender Equality in Agricultural and Environmental Innovation)が設立され、事例研究の収集、比較検討が積極的に進められている。

 CGIARでは、CRP(第一期)において、ジェンダーに関する活動に一定(10%)の予算を配分することを制度化したが、さらにPortfolio 2017−2022では、各CRPの活動に効果的にジェンダーの視点を導入するためのプラットフォーム(Gender Platform)をPIMの活動の一部として設定している。今後は、計画・実施の各段階で、成果の最大化に向けてジェンダーの視点が十分に考慮されているか、という点がさらに重視されていくであろう。


5.CGIARと日本の連携の強化

 ここまでCGIARによる食料供給システムの確保という地球規模の課題への挑戦について述べてきたが、この課題は同時に、食料の半分以上を輸入に依存する日本が直面するものでもある。その意味では、地球規模での安定した農業・食料生産を目指すCGIARの目的は、日本の国益と完全に一致する。とくに、第6回アフリカ開発会議(TICAD VI:Tokyo International Conference on African Development 6)で我が国がその取組として示した、農業の収益性・生産性向上、「食と栄養のアフリカ・イニシアティブ(IFNA:Initiative for Food and Nutrition Security in Africa)」や「栄養改善事業推進プラットフォーム(NJPPP:Nutrition Japan Public Private Platform)」を通じた栄養改善への着目、民間セクターの活動促進に関しては、これらを実現させるパートナーとしてCGIARが重要な役割を果たすと期待できる。


 日本はCGIAR設立からそのメンバーとして有効な協力関係を築いてきたが、2000年以降、CGIARがその活動を拡大するなか、日本からの財政的支援は大幅に減少している(図3)。一方、CGIARに在籍する日本人研究者数や共同研究を介した人的交流は増加傾向にある(2017年は長期・短期を含め約70名の邦人研究者がCGIARで活動)。

図3 CGIARへの全拠出額と日本の貢献
図3 CGIARへの全拠出額と日本の貢献

 優れた研究・開発機関や大学であっても、独自で基礎研究から技術開発、普及までの工程を全てカバーすることは非常に困難である。現在CGIARは、その研究ネットワークとしての役割や機能をフルに活用し、「研究・開発の各段階を連動させることでインパクトのある成果を実現させる」という点に視点を置き、体制を大きく変化させている。このようなCGIARの変化を、日本の研究・開発機関も有効に利用するべきではないだろうか。

 研究機関は、CGIARとの連携によって、優れた共同研究パートナーと現地での活動を行うプラットフォームが得られ、農業開発機関や民間企業にとっては、CGIARのもつ研究基盤・情報と広いネットワークを利用できることになる。また、「世界に通用する人間であると同時に、日本の良さも自覚したうえで働くことができる」グローバル人材(JICA, 2013)の育成の面でも有効に利用ができよう。

 「緑の革命」の実現には、日本はCGIARのメンバー国として財政的支援を行うだけでなく、多くの研究者を輩出し、共同研究を進めることで大きく貢献してきた。今後、日本が地球規模の安定した食料生産システムを確立する、第二の「緑の革命」に貢献するためには、広い視点とネットワークを利用して農業研究・開発を展開してくことが必要不可欠であるが、そのパートナーとしてCGIARが、これまで以上に日本との連携を拡大し、大きな役割を果たしていくことを期待する。


<参考文献>
1)FAO, IFAD and WFP (2015) The State of Food Insecurity in the World 2015, Meeting the 2015 international hunger targets: taking stock of uneven progress, Rome. http://www.fao.org/3/a-i4646e.pdf
2)The GBD 2015 Obesity Collaborators (2017) Health Effects of Overweight and Obesity in 195 Countries over 25 Years, N Engl J Med 377:13-27, DOI: 10.1056/NEJMoa1614362.
3)FAO (2011) Global food losses and food waste – Extent, causes and prevention, Rome. http://www.fao.org/docrep/014/mb060e/mb060e00.pdf
4) United Nations (2017) World Population Prospects: The 2017 Revision, Key Findings and Advance Tables, Working Paper No. ESA/P/WP/248. https://esa.un.org/unpd/wpp/Publications/Files/WPP2017_KeyFindings.pdf
5) Thirtle C, Lin L, Piesse J (2003) The Impact of Research-led Agricultural productivity growth on poverty reduction in Africa, Asia, and Latin America, World Development 31 (12): 1959-1975.
6) Renkow M, Byerlee D (2010) The impacts of CGIAR research: A review of recent evidence, Food Policy 35 (5): 391-402.
7) Nature Plants (2017) Saving the world, Nature Plants 3, 17069, doi: 10.1038/nplants.2017.69.
8) Kurabachew H (2015) The Role of Orange Fleshed Sweet Potato (Ipomea batatas) for Combating Vitamin A Deficiency in Ethiopia: A Review, International Journal of Food Science and Nutrition Engineering 5(3): 141-146, doi:10.5923/j.food.20150503.05.
9) Lawson C, Sanderson J (2016) The intellectual property and food project, from reviewing innovation and Creation to deeding the world, Routledg, London and Newyork.
10) 国際協力機構(2014) 池上彰と考える「グローバル人材とは何か」

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