ケニアのコメ事情 コメはアフリカにおける主要な主食用穀物で、伝統的なメイズやミレットからの転換が進んでいる。我が国は、第4回アフリカ開発会議(TICAD)において、サブサハラ(サハラ砂漠以南)・アフリカのコメ生産を2008年の1400万tから10年間で倍増させることを打ち出した。14年の生産は2500万tを上回り、この目標はほぼ達成される見通しである(日本農業新聞17.8.20)。第6回TICAD(16年)は、初めてのアフリカでの開催で、ケニアの首都ナイロビに安倍総理が出席した。農業分野では、引き続き、持続可能な開発による農業生産の向上を図るとともに、生産・加工・流通・市場をつなぐフード・バリューチェーンを強化していくことが位置付けられた。 こうした状況を背景に、当研究所では東アフリカの重要国・ケニアにおいて、コメのフード・バリューチェーンを考慮した農業農村開発の調査を、2016年から2年間にわたり実施中である。その一環として、中間所得層が育ってきており、スーパーを含む大型ショッピング・モールがいくつもオープンし、20以上の日本食店が開店するなど、食の多様化も進むナイロビで、コメに関する意識調査を同年11月4〜5日にかけて実施した。 YAYAセンターショッピング・モールで来場者171人を対象*に、意識調査に加え、炊立てのジャポニカ米の試食アンケート調査も行った。その結果の概要を紹介する。 対面アンケート調査の様子(ナイロビにて)
①主食は何か(複数選択可)/全体で119人(70%)が「コメ」を主食と回答した。ケニア人に限っても35人(49%)がコメを主食とし、伝統的な「ウガリ」(メイズ粉をゆでて固めたもの)を主食としたのは29人(40%)に留まった。ナイロビのような都市部で、コメの普及が相当に進んでいることが裏付けられた。 ②購入しているコメの種類/「バスマティ米」(インディカ種で香りが強い。ナイロビに近いムエア地域が主産地)が115人(77%)と高い支持があった。「ジャポニカ米」は10人(7%)で、アジア系の支持が高かった。 ③日本食/「ジャポニカ米を食べたことがある」人は全体では72人(42%)。内訳はアジア系73%、欧米系78%と高く、ケニア人は21%に留まった。その72人のうち、91%が日本食店に行ったことがあり、好みの和食は、すし(59%)、テリヤキ(39%)、刺身(32%)の順となった。 ④ジャポニカ米の評価/ジャポニカ米を試食した171人のうち、「とても良い」、「少し良い」との回答が107人(63%)に対し、「嫌い」の回答は15人(9%)に留まり、全体的には好感度が高い。また、そのどこが良いかとの質問には、「食感」が63%となり、「香り」のバスマティ米とは異なる食感に高い評価が集まった。 調査結果から、①ナイロビのような都市部ではコメの普及が相当に進んでいる、②バスマティ米が人気だが、ジャポニカ米も和食の普及に付随し一定の需要が見込まれるといえ、コメ・バリューチェーン戦略に役立てていきたい。 |