(一財)日本水土総合研究所がミャンマーで
圃場(ほじょう整備の国際シンポジウムを開催


 

 現在、アジア諸国では、高い経済成長を背景に農村から都市への人口移動が活発化しています。このため、農業労働者の確保が困難になってきていて、農業の機械化とそれを可能にする圃場整備の推進が強く求められています。

 一般財団法人日本水土総合研究所(JIID :The Japanese Institute of Irrigation and Drainage)は、2014〜15年にミャンマー農業灌漑(かんがい省(当時)と協力して、バゴー管区オクトウィン地区で40haの換地処分を伴うモデル圃場を整備しました。事業実施後、当該農地でコメの2期作が定着するとともに、農業機械が積極的に導入され、効率的な営農が行われています。また、2015〜16年にはカンボジア水資源・気象省と協力して、バッタンバン州で140haのモデル圃場を対象に、換地処分を伴わない農地整備(農道と用水路の整備)を行いました。

 JIIDは、これらのモデル圃場において実施した整備の成果をアジア諸国と広く共有するとともに、今後、アジア諸国で圃場整備を進めていくための課題や将来の方向性を議論するために、モデル圃場を整備したカンボジアおよびミャンマー、さらにタイ政府の圃場整備担当者を招聘し、平成28年12月1〜2日(2日は現地視察)、ミャンマーの首都ネピドーで、「圃場整備国際シンポジウム」を開催しました。これはアジアでも、また世界でも初めての国際会議で、大きな反響がありました。

 とくに、タイは圃場整備に高い関心を有していて、農業・協同組合省王室灌漑局が農地整備事業を実施し、農地改革事務局が農地改革を推進すべく農地の区画整理を進めています。


 1日目のシンポジウムでは、冒頭、JIIDの齋藤晴美理事長とミャンマー農業畜産灌漑省のティン・トゥ事務次官が挨拶を述べました。齋藤理事長は、「本シンポジウムは、圃場整備に関するアジア初の国際会議であり、本日は誠に歴史的な日です。このシンポジウムが、アジアに圃場整備が広がる出発点になることを希望します。参加国の皆様には、この貴重な機会を通じて、他国の圃場整備の推進状況を把握するとともに、意見交換を通じて相互認識を高めていただきたい。本日の成果が、アジア諸国における圃場整備の推進の一助となることを、心から祈念します」と述べました。

ミャンマーの首都ネピドーにて、
同国農業畜産灌漑省のティン・トゥ事務次官らが出席した
「圃場整備国際シンポジウム」の参加者
ミャンマーの首都ネピドーにて、同国農業畜産灌漑省のティン・トゥ事務次官らが出席した「圃場整備国際シンポジウム」の参加者

 続いて、ミャンマー農業畜産灌漑省から、オクトウィンモデル圃場整備地区の施工方法、同地区において圃場整備がもたらした営農などに係わる効果が紹介されるとともに、農地の状況に応じた圃場整備のあり方などについて、講演がありました。

 次に、カンボジア水資源・気象省から、JIIDが同国バッタンバン州で実施したモデル圃場の整備の内容、および整備が営農にもたらした成果などについて説明がありました。

 さらに、タイ農業・協同組合省王室灌漑局からは、タイにおける圃場整備や灌漑施設整備について、また、同農地改革事務局からは、タイの農地改革の推進状況(受益農地569万ha、受益農家278万戸)について報告がありました。

 最後に、齋藤晴美理事長より、日本の圃場整備の歴史を紹介するとともに、戦後、政府が圃場整備を速やかに全国展開することを可能にしたツール(法制度、予算制度など)について説明がありました。

 講演に続いて行われたパネルディスカッションでは、パネリストと会場との間で圃場整備を実施するうえでの問題点や普及方法などについて、積極的な意見交換が行われました。

 2日目はネピドー周辺の圃場整備地区およびバゴー管区のオクトウィンモデル圃場整備地区を視察しました。

2日目に行われたミャンマーのバゴー管区のオクトウィンの
JIIDモデル圃場整備地区現地視察状況
ミャンマー米穀連盟ミョウ・アウン・チョウ副会長の説明

 シンポジウムには、3か国の政府機関(ミャンマーは地方機関を含む)、大学などから70名以上が参加しました。参加者からは、「他国の圃場整備の状況が良く理解できた。会議に参加して良かった」とのコメントが寄せられました。

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