編集後記 いわゆる世界経済にあっては「石油」こそが、極限の資源ともいえるでしょう。しかし、ヒトという生き物にとって必需な資源は、やはり「食べ物」と「飲み水」でしょうし、安定的に前者を得るためには農業用水が不可欠です。 今回の特集では主として地表水をテーマにしていますが、地下水に関しても興味深い事例があります。石油大国にして極端な水資源不足にあるサウジアラビアの農業政策です。1970年代のオイルショックでは同国は圧倒的優位にありましたが、「食料」が、自国の安全保障の課題であることを見出しました。 そこで地下水揚水と農業補助金によって、コムギ増産を達成し、1980年代には200万t前後の輸出を行うまでになりました。しかし、サウジアラビアの地下水は化石水で有限であるため、地下水の枯渇がみられるようになり、これを回避するために、計画減産によって16年には生産中止にする旨を、08年に発表しました。当時は世界食料危機と呼ばれた高騰期でしたが、原油も値上がりしていたので、財政的には食料輸入代金に懸念はなかったのでしょう。 しかし、原油価格の低迷で同国は財政維持のため世界の株式市場で、「売り」に回っています。一方、基本的には人口増加というなかで、食料価格は中長期的に強含みです。再生産のできない石油と化石水の消費のうえに成り立った国作りのなかで、すでに地下水の枯渇がみえてきた国が、100年後の識者からどう評価されるか、目に見えるような気がします。 水資源管理は地表水のみならず、地下水資源でも重要な課題です。
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