─JIIDから─ ミャンマーにおけるモデル圃場(ほじょう)整備の実施 現在、新興国を中心に旺盛なインフラ需要が見込まれており、我が国は成長戦略として、「インフラシステム輸出戦略」を打ち出しています。このような中、日本水土総合研究所では、農業インフラシステム海外展開(実証調査)の一環として、平成26年度にミャンマーにおいてモデル圃場整備を実施しました。 モデル圃場の設置地区の選定では、灌漑(かんがい)用水の確保、展示圃場としての可能性の有無、主要道路へのアクセス条件等を総合的に勘案し、その結果、バゴー州タングー県オクトウィン地区にある約40haの農地を選定しました。 設計に当たっては、日本の圃場整備の基準を参考に、ミャンマーの実情に応じた設計基準(案)の作成を行い、中型機械化体系に適合した区画として標準区画を360フィート×120フィート、1エーカー(約40a)としました。 日本が途上国に対して行うインフラ整備事業は、従来では灌漑用水路等いわゆる“線”の工事が中心でしたが、農地という個人財産の権利移転が大規模に発生する“面”整備、すなわち圃場整備の実績は多くはありません。ミャンマーでは農地が国有であり、農家には耕作権証書が発行されています。このため所有権の移転ではなく耕作権の移転という形で、日本と同様に「換地」が可能です。そこで、工事に先だって、あらかじめ受益農家全員の意向を確認し、各農家の農地がどの位置に移転されるのか、図面によって確認して同意を得る「事前換地」の手法を採用しました。 図1 従前の農地
本事業は、ミャンマー農業灌漑省の協力の下、実施に移されました。具体的には、土地登記局が耕作権証書の発行、農地面積の確定、従前地測量および換地計画の農家説明、灌漑局が圃場整備計画・設計、工事計画の農家説明、用水路・農道の整備、農業機械化局が圃場内の整備(整地・均平)を行いました。 民間建設会社が発達していないミャンマーでは、土木工事は政府職員が直轄(ちょっかつ)で行います。工事方法についてもミャンマーならではの特徴として、農業機械であるトラクターに各種アタッチメントを取り付け、表土剥(は)ぎ、切盛土、基盤整地、表土戻し、表土整地が行われました。計画・設計から地元説明、同意取得、工事、耕作権証書の発行まで、事業は1年という短期間で完了しました。 現在、モデル圃場内には農業機械ステーションが設置され、農業機械化局が保有する農業機械が運転手付きで農家に貸し出されています。農業灌漑省によると農家にも大変に好評とのことで、完成直後にはテイン・セン大統領が視察に訪れ、日本の支援に対し感謝の言葉がありました。今後は、圃場整備前後の作付け体系、農業機械化体系の変化等を調査し、本事業の効果について調査研究を進めるべく検討しています。 図2 圃場整備(換地処分)後の区画
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