第7回世界水フォーラムの開催について

農林水産省 農村振興局整備部 設計課      
海外土地改良技術室 海外調整第2係長 宇野健一

1.はじめに

 世界水フォーラムは、3年に一度、世界中の水関係者が一堂に会し、地球上の水問題解決に向けた議論や展示などが行われる世界最大級の水をテーマとする国際会議である。ここでは、あらゆるステークホルダーが集まり、水議論を行うとともに、具体的な提案・提言をまとめ、問題解決のための行動を促進している。さらに、具体的かつ継続的な政治的コミットメントの発信も行われるなど、オープンかつ建設的な議論の場として開催されるものである。

 2003年には、第3回世界水フォーラムが日本の琵琶湖・淀川流域(京都・滋賀・大阪)にて開催され、183か国2万4000人が参加した。表1に示すように、この第3回世界水フォーラムで参加者は大きく増加し、直近のフランス・マルセイユにて開催された第6回世界水フォーラム(2012年)では、参加者は173か国3万4000人となっている。

 こうした、いっそうの盛り上がりを見せるなか、2015年には第7回世界水フォーラムがWater for Our Futureをテーマとして開かれることとなっている。本稿では、その紹介とともに、農林水産省の取り組みについても紹介する。

表1 世界水フォーラムの開催経緯
表1 世界水フォーラムの開催経緯

2.第7回世界水フォーラムの概要

 第7回世界水フォーラムは、2015年4月12日(日)〜4月17日(金)にかけて、韓国の大邱(テグ)市および慶尚北道(キョンサンブクト)にて開催される(図1)。今回のフォーラムの場は、ミレニアム開発目標に代わる2015年より先の世界の将来像を共有し、その実現に向けた日本の技術と経験を、これまで以上に効果的に示す絶好の機会と捉えることもでき、日本の省庁、企業・事業体、大学・研究者、NGO・市民グループなどが、幅広く参加する予定となっている。

 今回の世界水フォーラムは、4つの「プロセス」に、エキスポ&フェアや市民フォーラムを加えた構成となっている。定められた16のテーマについて、それぞれに優先課題を4〜6つ定めてセッションと呼ばれる単位に分かれて議論を行う「テーマプロセス」、閣僚等の参加のもとで閣僚宣言や水の重要性を強調するマニフェスト等を発信する「政治プロセス」、地域の優先課題に基づいて議論を行う「地域プロセス」、そして今回新設された科学・技術およびイノベーションに関する報告書を作成する「科学・技術プロセス」が執り行われる。エキスポ&フェアでは、会場のEXCO(テグ市)に多数のブースが設置され、市民フォーラムにおいては、セミナー等のイベントが行われる。

図1 第7回世界水フォーラムの主要プログラム
図1 第7回世界水フォーラムの主要プログラム

 このように非常に大規模かつ広範な活動が行われるうえに、地理的には日本にもっとも近い韓国での開催であり、わが国をはじめアジアモンスーン地域の農業農村振興の取り組みを情報発信するためにも、幅広い関係者の参加が望まれる。



3.農林水産省(農村振興局整備部設計課)の取り組み

 農林水産省農村振興局整備部設計課(以下、設計課)は、エキスポ&フェアにて開催される日本パビリオンへの農林水産省ブース出展や、設計課が事務局を務めるJNCID(国際かんがい排水委員会:ICIDの日本国内委員会)、INWEPF(国際水田・水環境ネットワーク)を通じて、テーマプロセスのセッションやサイドイベントにおいて、情報発信を行うこととしている。

 農林水産省ブースにおいては、JNCID、INWEPFに加え、農業農村振興関連団体を中心に広く連携し、わが国の優れたかんがい排水施設や水管理手法について情報発信する予定である。また、平成26年より取り組みが開始されたICIDかんがい施設遺産制度(ARDEC第51号所載の「国際かんがい排水委員会(ICID)のかんがい施設遺産登録制度について」を参照)によって、かんがい施設遺産第1号に登録された日本の9施設についても、広く情報発信を行う予定である。

 なお、日本パビリオンにおける農林水産省以外の農業農村振興関係の出展として、独立行政法人国際農林水産業研究センター(JIRCAS)によるブース出展と、公益社団法人農業農村工学会によるポスター展示が予定されている。

 テーマプロセスでは、とくに農業農村振興と関連の深い「2.1 食料のための水(Water for Food)」のなかでICIDが共同コーディネーターを務める「2.1.3 かんがいの近代化セッション」が開かれる。本セッションでは、(1)施設の整備と改良/(2)水サービスの提供と適切な水管理技術を使った改善/(3)組織の設立と再構築/(4)組織管理、などの問題に焦点をあて、世界銀行・国連食糧農業機関(FAO)・アジア開発銀行といった国際機関、韓国・中国・トルコの国内機関、およびPAWEES(国際水田・水環境工学会)といった学術機関などから幅広く参加があり、議論が行われる予定である。

 また、INWEPFによるサイドイベント「Future of INWEPF(4月13日)」の主催、ICIDトルコ国内委員会等が主催する持続的なかんがい施設の利用をテーマとしたサイドイベントへのICID日本国内委員の発表者としての参加など、積極的に貢献を図っていくこととしている。INWEPFのサイドイベントにおいては、水田の多面的機能の重要性への理解や、効率的水利用のための参加型水管理に関する南南協力の推進といった、これまで継続的に取り組んできた課題について、日本を含むINWEPFメンバー国による情報発信や議論が行われる予定である。当サイドイベントを含む主要プログラムは図1のとおりとなっている。


4.おわりに

 今後、世界の水需要が増大していくなかで、世界の水利用の7割を占める最大の水ユーザーである農業分野による効率的水利用を進めていくことは必要不可欠である。そのなかで、優れた先進技術や水管理組織を有する日本が、その知見や経験を発信していくことは、世界の水利用に大きく貢献するとともに、日本のプレゼンスを高めることとなる。

 農業用水の重要性や我が国の取り組みについて、情報発信を行うことができる貴重な機会である本フォーラムの成功を願うとともに、わが国を含めた各国の農業農村振興関係者の多数の参加が望まれる。


* 第7回世界水フォーラムのプログラム、参加登録などの詳細は下記ウェブサイトで閲覧できます。

  http://eng.worldwaterforum7.org/main/

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