浮島での空心菜栽培による
水質浄化・貢献活動

岐阜県立恵那農業高等学校 教諭 森本達雄

 岐阜県恵那市にある木曽川水系の阿木川(あぎがわ)ダム湖において、平成14年より2年続けてアオコが大量に発生した。このアオコの発生を防ぐために、ダム湖に設置した浮島で中国野菜の「空心菜(クウシンサイ)」を栽培し、ダム湖の栄養分を吸収させ水質改善ができないかと考え16年度より取り組んでいる。

写真1 阿木川ダム湖にて
写真1 阿木川ダム湖にて


 ポリエチレン製フロートで作った浮島に、現在では約1200本の空心菜を栽培することで、年間約1万1000m3の水から窒素やリンを吸収して(空心菜のリン含有量などから算出)、水質改善に役立てている。収穫した空心菜は、ダム湖横の売店で販売されている。さらに30種類のレシピ開発も行い、空心菜レシピ集を地域のイベントなどで配布している。なお、小中学校などの池で簡単な水質浄化実験ができるよう「ペットボトル・ミニ浮島」を考案した。県外でも利用されるようになり、とくに名古屋市の堀川(伊勢湾の海水が流入する汽水域で、川の底部では塩分約1.06%)でも生長が確認できた。

 
写真2 阿木川ダム資料館にて
写真2 阿木川ダム資料館にて

 この水質浄化活動により開発してきた浮島栽培や加工技術を生かし、カンボジアにおいても活用プロジェクトが進められている。平成20年3月、8月の2回にわたり、岐阜県ユネスコ協会主催のスタディーツアーに同行し、トンレサップ湖の水上生活者を対象に、空心菜の水上栽培や空心菜茶の生産などについて、現地で説明を行った。

写真3 トンレサップ湖の水上寺子屋にて
写真3 トンレサップ湖の水上寺子屋にて

 さらに今年度は、東日本大震災により津波の影響を受けた仙台市の水田において、空心菜の栽培による塩分吸収実験に取り組み、1株当たり2.04gの塩分吸収を確認できた。塩気のある空心菜は、生でもおいしく感じられ、また栽培にも資材をほとんど必要としない。

 これまでの実験により、河川や湖沼、河口部の汽水域、塩分を含む農地においても空心菜栽培が可能であると確認できた。地元の水質保全活動とともに、国内外を視野に入れながら活動に取り組んでいきたいと考えている。

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