編集後記 生物多様性条約では、その生物多様性を「すべての生物の間の変異性をいうものとし、種内の多様性、種間の多様性および生態系の多様性を含む」と定義しています。この条約は「生物多様性の保全と利用に関する国際条約」ですから、もちろん「保全」がまず目的とされますが、「持続可能な利用」、そして昨年の名古屋会議でも議論の的になった「遺伝資源の利用から生じる利益の公正な配分」が目的になっています。 近年、世界各地でミツバチが消えて、農業にとっては「授粉サービス」の確保が懸念されています。こうした、生態系のサービスは授粉にとどまりません。たとえば、漁業はまさに「海の幸」を食料として供給しています。食料供給のみならず、森林は河川の流量を安定化し、農業用水や飲料水を供給しています。植物は「酸素」を供給しています。生態系のサービスの総額は33兆ドルという試算もあります。これは試算当時の世界のGDPにほぼ相当します。そうした、数字はともかく、生態系のサービスがあればこそ約70億という世界人口が生存できているわけです。 さて、生態系は代替がききません。たとえばアマゾンも、里山・里海も、それぞれの生態系が守られなければ、生物多様性は損なわれてしまいます。国際協力と当該国の努力が、人類文明の存続に不可欠です。
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